赤本(レッドブック)って知っていますか?赤本というと大学受験の過去問集が思い浮かびそうですが、全くの別物です。自動車業界には、車毎の参考価格が記載された本が存在するのです。
そのレッドブックが「車査定の時にも使用されている」という噂を耳にする事が有りますが、本当なのでしょうか?ここでは、レッドブックが何なのか、どういう場面で使用される物なのかなどについて見ていきます。
赤本(レッドブック)とは
赤本(レッドブック)は、正式名称を「オートガイド自動車価格月報」と言い、有限会社オートガイドが発行している業界紙です。
どんなことが書かれている?
レッドブックには、車種や年式、形式別に以下の情報が記載されています。
- 新車価格
- (中古車)小売価格
- (中古車)下取価格
- (中古車)卸売価格
実際のレッドブック(サンプル)では、以下の様な記載がされます。
(画像参照元:レッドブック)
購入方法
レッドブックの購入は、公式ページから購入申込書を印刷してFAXで申し込むか、直接電話をして申し込みをする事になります。
金額及び発行月は以下の通りです(平成28年9月時点)
種類 | 発行月 | 金額 |
---|---|---|
①商用車 | 奇数月 | 7,800円 |
②国産乗用車 | 毎月 | 10,300円 |
③軽自動車・二輪車 | 奇数月 | 4,700円 |
④輸入自動車 | 偶数月 | 7,200円 |
全シリーズ(①②③④) | - | 27,000円 |
国産車シリーズ(①②③) | - | 22,000円 |
注:金額は年間購読料です。月割りでの申し込みは出来ません。
なお、支払は郵便振替口座への振込(前払)となっています。
但し、内容的には完全に業務用なので、一般の方が読んで面白い物では有りません。金額も決して安くは無いので、「こういう本が有るんだ」という程度に思っておくと良いでしょうね。
主に保険業界が使用している?!
レッドブックは、査定の現場で使われるというよりは保険業界でメインに活用されています。
交通事故で車に損害が発生した場合、修理する事が妥当なのであれば、適正な修理費相当額が損害として認められる事になります。
しかし、全損若しくは酷く破損した場合など、修理する事が妥当でない(若しくは修理出来ない)ケース(※)では、「修理費相当額」ではなく「車の時価相応額(再取得価格)」が損害として認められます。
※:全損には物理的に修理が出来ない(物理的全損)、経済的に修理が不能(経済的全損)が有りますが、争いが起き易いのは経済的全損です。
上記の参考として、全損時の損害額は、昭和49年の判例で以下の様に決定すべきとされています。
原則として、当該車両と同一の車種や型・年式・同程度の使用状態・同程度の走行距離などの自動車を、中古車市場によって取得するために必要な価額によって定めるべき
(最高裁 昭和49/4/15交民集7巻2号275頁)
そして、この損害額を決める際に参考にされるのが、「レッドブック」なのです。実際に中古車の時価が争点となった場合、損保会社との話し合いの場だけでなく、裁判所でもレッドブックに記載されている金額を基準にするのが一般的となっています。
但し、レッドブックに記載されている小売価格は低めとなっており、現実にはその金額では中古車は購入出来ないので「時価として扱うのは相応しく無い」と言われる事が有ります。どちらかというと事故の被害者にとって不利、加害者側の保険会社側にとって有利という訳ですね。
とは言っても、レッドブックの記載金額を基準にするという慣例が有る為、それを覆す事は裁判ではなかなか困難であるのも実状です。本気で覆そうと思ったら、レッドブックの記載金額が時価と大きく乖離している事を実証していかなければならないでしょうね。
参考:過去にはレッドブックの記載金額ではなく、減価償却計算により残存価格を算出し時価額と認定した例や、中古車売出情報を参考に時価額を認定した例も有ります。
査定時にも使用されている?
レッドブックに記載されている金額は、新車ディーラーの下取り査定や中古車買取査定時にも使用される事が有る様です。但し、元々査定に使う為に作られた物ではないので、査定価格としてそのまま使うには以下の様な問題点が有ります。
- 発売後10年経った車は、一律で販売価格の10%として評価される
- 地域毎の需要が反映されていない
参考:最近は各地で開催されているオートオークションのサイトで入札結果や相場情報を調べる事が出来るので、レッドブック自体が陳腐化していると言われる事も有りますが、特に保険会社や法曹界での需要は根強い様です。
中古車は、一台一台異なり全く同じ状態の物は有りません。地域毎に需要は異なりますし、オプションの有無や内外装の状態などによっても価値は異なります。それをレッドブック記載の金額で一概に決めてしまうのは無理が有りますよね・・・。
だからといって、レッドブックを実際に購入してチェックするのも時間とお金がもったいないので、査定額が気になる方は中古車の無料一括査定を利用して複数の業者から見積りを貰った方が良いでしょう。
仮にとある業者がレッドブックを参考に査定していたとしても、複数の業者から見積りを貰って、一番高い金額を提示して来た業者に売れば問題有りませんね。