愛車を売る時は、複数の査定業者に依頼するのが鉄則です。なぜなら、査定業者によって提示される査定金額が異なるからです(参考:お店ごとに査定金額が異なる理由)。
そのため、多くの人は「車の一括査定サービス」を利用します(自分で査定業者を複数回るのは面倒ですからね)。そして、査定を依頼した業者の中から、最も高い査定金額を提示してくれた業者に愛車を売却する事になります。
この時、複数の査定業者が入れ代わり立ち代わり査定をしに自宅を訪れるのですが、うっかりしていると複数の業者と売却契約を結んでしまうので注意が必要です。
車の一括査定サービスの利用時は二重契約に注意
車の売却における二重契約とは、ある査定業者と売却契約を交わしたにもかかわらず、違う査定業者とも売却契約を交わしてしまう事を言います。
普通に考えたら、二重契約なんて起きそうに無いと思いますよね。しかし、「車を少しでも高く売りたい」という気持ちがこういった自体を招いてしまうのです。
Aさんは車の一括査定サービスを利用した結果、概算の査定金額の上位3社に査定を依頼しました。
翌日の午前中、まずB社が査定をしに来ました。B社が提示した金額は「100万円」。納得出来ないAさんは取り敢えずB社の人には帰ってもらいました。
その日の午後、C社が査定をしに訪れました。C社が提示した金額は「120万円」。B社よりも20万円も査定金額が高くなった事に喜んだAさんは、その場で契約書にサインをしてしまいます。
翌日D社が査定に訪れました。Aさんは「C社と売却契約を交わしてしまった」と言い出しにくかったので、査定をして帰ってもらう事にしました。すると、D社が提示した金額が「125万円」だったのです。しかも、「今日売却してくれるなら130万円出す」と言うではないですか。
Aさんは、その金額に目が眩み「C社には後で断れば良いや」と安易な気持ちで、D社と売却契約を交わしてしまいます。後日、最初に契約を交わしたC社にキャンセルの電話を入れたところ、C社に「キャンセルは出来ません。違約金を払って下さい」と言われてしまいした。
Aさんは泣く泣くC社に違約金を払い、D社に車を売却しました。
これがまさに二重契約の典型的な事例です。民法上は、「買いたい」「売ります」と互いが意思表示をする事で契約は成立してしまいます。今回の事例の場合は、契約書を交わしていますので、当然C社との契約は成立しているわけです(D社とも成立しています)。
二重契約をしてしまった場合は、最初に契約した買取店から損害賠償を請求されます。これが違約金に当たります。
また、民法の損害賠償とは別に、刑法の「横領罪」に問われる恐れが有ります(刑法252条1項)。罰則は5年以下の懲役ですので、かなり重い罪となります。
そのため、複数の査定業者に車の査定を依頼する時は、安易に売却契約を交わさないように注意しなければなりません。
ちなみに、二重契約ではなくただ売却をキャンセルする場合に「二重契約になりますよ」と脅して、法外なキャンセル料を請求してくる業者がごく稀にいます。そのため、契約を交わす前に、キャンセル料の確認は忘れないようにしましょう(大手の一括査定サービスを利用する限りは、こういう業者はいませんけどね)。
一括査定サービスの利用の仕方
複数の業者に査定を依頼する事は別に悪い事では有りません。冒頭でも書いたように、車を高く売るには当然行った方が良いわけです。
しかし、売却契約を結ぶ事に関しては、慎重に判断しなければなりません。買取業者も遊びでやっているわけではないのですから。
複数の業者に査定を依頼する場合は、以下の点に注意するようにしてください。
- 査定依頼のスケジュールを立てる・忘れない
- その場で売却契約を交わさない
- 全ての業者に見てもらってから、しっかりと比較・検討して最終決断を行う
事例にも有ったように「今日(今)売ってくれたら、買取金額を上乗せします」というセリフは、買取業者の常套手段です。上乗せされた金額を見て、その場で売却契約を交わしてしまう人も結構います。焦って契約をしない事が大切です。
ここで役立つのがスケジュールです。「何日までに売るか売らないかの答えを出すので、その金額で検討させてください。」と切り替えして、交渉するようにしてください。当然「何日まで」というのは、全ての査定が終わる日又はその数日後です(冷静に考える時間も必要でしょうから)。
全ての査定業者の査定金額が出揃ってから、しっかり比較検討して売却する業者を選ぶようにして下さいね。
一括査定サービスを利用する場合に限らず、査定業者を自分で回る場合でも同様の事が言えます。