一昔前までは、自動車免許を持っていて当たり前の時代だったので、自動車教習所は需要に合わせてたくさん有りました。しかし、最近は自動車教習所の数が減少傾向に有る事を知っていますか?
ここでは、自動車教習所の数の推移や減少理由等について見ていきましょう。
自動車教習所の数
自動車教習所は道路交通法第98・99条に基づいて運営されており、2つの形態が有ります。
- 指定自動車教習所
- 届出自動車教習所
以下で、それぞれの教習所の数や推移を見てみましょう。
指定自動車教習所
指定自動車教習所は、平成27年末時点で全国に1,339校有ります。過去10年の指定自動車教習所数及び卒業者数の推移は、以下の通りとなっています。
指定自動車教習所数(個) | 卒業者数(人) | |
---|---|---|
平成18年 | 1,441 | 1,850,481 |
平成19年 | 1,424 | 1,786,867 |
平成20年 | 1,408 | 1,636,513 |
平成21年 | 1,392 | 1,579,209 |
平成22年 | 1,337 | 1,565,812 |
平成23年 | 1,366 | 1,563,722 |
平成24年 | 1,358 | 1,589,098 |
平成25年 | 1,351 | 1,611,940 |
平成26年 | 1,347 | 1,595,971 |
平成27年 | 1,339 | 1,571,071 |
(参照:警視庁「運転免許統計」)
平成24・25年の卒業生数が前年に比べて微増した事を除けば、指定自動車教習所及びその卒業者数はこの10年間減少し続けていますね。
ピーク時(平成3年)の指定教習所数は約1,550ヶ所、卒業生は約250万人だったので、指定教習所は約1.5割、卒業生は実に約4割の減少です。
なお、卒業者数に比べて教習所の数がそれほど減少していないのは、平成21年の道路交通法の改正により、75歳以上の方が運転免許を更新するときに「高齢者講習」を受ける事が義務になった為、安定した収入が確保出来ている事が原因と考えられます。
届出自動車教習所
一方の届出自動車教習所は、全国届出自動車教習所協会のホームページによると、全国に91ヶ所(平成28年4月に確認)有ります。地域毎の内訳は以下の通りです。
地域 | 教習所数 |
---|---|
北海道 | 14 |
関東 | 31 |
中部・近畿 | 13 |
中国 | 9 |
九州 | 24 |
合計 | 91 |
注:届出教習所数の過去の推移は公表されていません。
教習所・卒業生の減少理由
上記で見た様に、指定自動車教習所は近年減少傾向に有ります。その理由として一番大きいのは「18歳人口の減少」、つまり「少子化」です。少子化には、子供や若者を相手にする業界では一様に頭を悩まされていますね。
また、維持費の高さや趣味嗜好の変化などによる「若者の車離れ」が生じており、免許取得者数自体が減少している事も原因の1つとなっています。(参考記事:若者の車離れの理由とデータから見る若者の車離れ)
若者の数が減少しているだけでなく、そもそも免許を取得しようという若者も減少傾向に有るので、教習所が生き残るのが大変な状況となっているという訳ですね。
教習所の対策
自動車教習所は過去数十年にわたって、「公安委員会のガイドラインに従って運営さえしていれば安泰で、放っておいても生徒が来てくれる」といった状態でした。
業界内での競争がそれほど激しくなかった為、生存を賭けた競争に慣れておらず、各校が苦戦を強いられている状況となっています。
教習の料金を下げて「安さ」で勝負する教習所が一時期増えましたが、価格競争は自らの経営を圧迫しますし、サービスの質が低下する事になりかねません。そこで、最近は「サービスの質を高める」事で、他との差別化を図る教習所が増えて来ています。
例えば、一般的な教習所は生徒が空いているコマを見つけて予約する方式を採用しているので、指導員を指名する事は出来ません。しかし、毎回違う教官に教わるのは、コミュニケーションが面倒だし、何だか効率が悪いですよね。
そこで、八戸ノ里ドライビングスクールの様に、免許取得まで1人の選任指導員が担当する事で、受講生の要望に応え易い体制作りをしている教習所が登場しました。
また、丁寧な運転が車の二酸化炭素排出量を抑え、結果として温暖化防止に繫がる事から「エコドライブ」が注目を浴びています。エコドライブが学べる「エコドライブ講習」を実施している指定自動車教習所は、2016年4月現在で東京だけでも28校有り、今後さらに増えて行くかもしれませんね。(参考:東京指定自動車教習所協会)
他にも日本在住の外国人向けの教習コースや、子育て中の女性、障害者を対象としたコースを開設している教習所も有ります。
教習所が減少傾向に有る中で、生き残れるのは「生徒目線でのサービスを提供出来る」教習所です。今後も様々な工夫を凝らしたサービスを提供する教習所が登場するかもしれませんね。