自動車の盗難被害は、所有者にとって尽きる事の無い心配事ですよね。ピーク時と比べると盗難件数は減っているものの、それでも地域や車種によっては未だに多くの盗難事件が発生しています。
ここでは盗まれやすい車種や地域、盗難後の検挙率などについて紹介していきます。
スポンサーリンク
年別の盗難台数
過去10年の「年別自動車盗難認知件数」を見てみましょう。キー無し(鍵をかけた状態)で盗まれたケースと、キー有り(鍵がかかっていない状態)で盗まれたケースとに分けています。
年度 | キー無し(鍵をかけた状態) | キー有り(鍵がかかってない状態) | 合計 |
---|---|---|---|
平成18年 | 25,703 | 10,355 | 36,058 |
平成19年 | 23,095 | 8,695 | 31,790 |
平成20年 | 20,005 | 7,663 | 27,668 |
平成21年 | 18,894 | 7,066 | 25,960 |
平成22年 | 17,574 | 6,396 | 23,970 |
平成23年 | 18,876 | 6,362 | 25,238 |
平成24年 | 15,782 | 5,537 | 21,319 |
平成25年 | 16,380 | 5,149 | 21,529 |
平成26年 | 11,825 | 4,279 | 16,104 |
平成27年 | 10,298 | 3,523 | 13,821 |
平成28年 | 8,530 | 3,125 | 11,655 |
(参考:警察庁統計・STOPTHE自動車盗難)
鍵をかけた状態で盗まれた件数の方が圧倒的に多いですね。「なぜ?」と思われたかもしれませんが、これはそもそも鍵を開けた状態でどこかに行く人の数が少ないからでしょうね・・・。
過去10年を見ると、全体としては平成23年が前年より増えた点を除けば毎年減少していますね。なお、平成元年頃は3万件超で推移していたのですが、平成16年にピークとなる64,223件まで増加し、その後は現在の様に減少傾向に有ります。
平成28年は11,655件なので、過去と比べると大幅に減少していますが、それでも1日約30台もの車が盗難に遭っている計算になりますね。
ここ数年で盗難が減ったのは、自動車ユーザーが犯罪防止への意識が高まった事や、イモビライザーを始めとする盗難防止装置が増えてきた事が考えられます。
盗まれた車はどうなる?
車を盗んだ犯人は、その車に乗ってドライブに出かける訳では有りません。
売却や輸出によって暴力団の資金源となったり、凶悪な二次的犯罪に利用されたりする可能性が高いです。また、盗難して解体した車を他の車両と合体させた上で、新たに登録を受けて販売するという手口も有る様ですね。
ちなみに、ナンバープレートだけを盗んで他の犯罪に使われる事も有る様です。(参考記事:ナンバープレートの盗難はなぜ起こる?盗難防止ネジで盗難を予防しよう!)
盗難されやすい車種や傾向
「車が盗難に遭った!」と聞くと、どの様な車種が思い浮かびますか?
まず思い浮かぶのは新型車や高級車ではないでしょうか?確かに高級車は盗んだ後で高く売れるでしょうから、盗まれやすい事に間違いないでしょうね。
しかし、最近は高級車に限らず貨物自動車や建設用の特殊自動車、トラクターなど事業用として需要の有りそうな車が被害に遭う事も多い様です。
以下で、過去3年で盗難件数の多かった3車種を見てみましょう。
車種(メーカー) | 2014年 | 2015年 | 2016年 |
---|---|---|---|
プリウス (トヨタ) | 70件(18.8%) | 62件(19.9%) | 59件(19.7%) |
ハイエース (トヨタ) | 40件(10.8%) | 55件(17.6%) | 43件(14.3%) |
ランドクルーザー (トヨタ) | 39件(10.5%) | 23件(7.4% | 28年(9.3%) |
注:当数値は日本損害保険協会が発表しているもので、盗難により保険金を支払った事例を対象に調査したものです。従って、実際の盗難認知件数とは異なります。
過去3年とも盗難件数の多い3車種は同じ、しかも全てトヨタ車です。トヨタ車は世界中で人気が有り値落ちもしにくいので、盗難した車が販売されたり輸出されたりするケースが多い様ですね。
盗難件数の多い3車種のいずれかに乗っている方は、ドキッとされたのではないでしょうか?
なお、過去の盗難件数で見た様に、盗難被害に遭った車の4台のうち3台(約75%)が、盗難時にキーを抜いていたのにも関わらず発生しています。
カギが付いたままの状態だと盗まれても仕方無いですが、車の盗難はカギが無くても行われます。犯人はその場で合鍵を作ってものの10分程で持ち去ってしまうのです。
また、以下の様に駐車場(特に月極駐車場)に置いている際に盗難に遭ったケースが全体の約6割を占めています。
盗難場所/年度 | 平成26年 | 平成27年 | 平成28年 |
---|---|---|---|
一般住宅 | 3,173 | 3,097 | 2,614 |
駐車場 | 7,160 | 6,003 | 5,498 |
路上 | 917 | 726 | 544 |
その他 | 4,854 | 3,995 | 2,999 |
合計 | 16,104 | 13,821 | 11,655 |
監視カメラや監視員のいる駐車場、見通しの良い駐車場などであれば被害に遭う可能性は低いでしょうが、監視員のいない誰でも入れる駐車場や人目につかない暗い駐車場などはかえって危険ですよ。
盗難されやすい地域
住んでいる地域によって、車が盗難被害に遭いやすいかどうかは異なってくるのでしょうか?
以下で、都道府県別の盗難件数ワースト10を見てみましょう。
平成27年 | 平成28年 | |||
---|---|---|---|---|
順位 | 都道府県 | 盗難件数 | 都道府県 | 盗難件数 |
1 | 愛知 | 2,205 | 茨城 | 1,590 |
2 | 茨城 | 2,107 | 大阪 | 1,577 |
3 | 大阪 | 1,747 | 千葉 | 1,538 |
4 | 千葉 | 1,277 | 愛知 | 1,349 |
5 | 埼玉 | 919 | 埼玉 | 914 |
6 | 神奈川 | 893 | 神奈川 | 639 |
7 | 栃木 | 564 | 栃木 | 415 |
8 | 兵庫 | 390 | 三重 | 370 |
9 | 東京 | 459 | 兵庫 | 351 |
10 | 三重 | 288 | 東京 | 309 |
- | ワースト10計 | 10,749 | ワースト10計 | 9,052 |
- | その他 | 3,072 | その他 | 2,603 |
- | 全国計 | 13,821 | 全国計 | 11,655 |
ワースト10に入った都道府県は、順位は微妙に違うものの2年とも同じです。都会は自動車の数も多いので、盗難件数も必然的に多くなるのかもしれないですね。
自動車の盗難件数は「愛知・大阪・千葉」が長年ワースト3の座を占めていたのですが、茨城県が仲間入りをして千葉を追い抜いてしまいました。これは、千葉県警が違法ヤード(※)を徹底して取締りした事が原因と考えられています。
※:外国人メインで組織された窃盗集団が、盗んだ自動車を解体する作業場の事。見た目は普通の解体工場と変わらない。
なお、ワースト10に入った都道府県の盗難件数が全体に占める割合は、以下の通りです。
2015年 | 2016年 | |||
---|---|---|---|---|
区分 | 盗難件数 | 割合 | 盗難件数 | 割合 |
ワースト10 | 10,749 | 77.8% | 9,052 | 77.7% |
その他 | 3,072 | 22.2% | 2,603 | 22.3% |
全国計 | 13,821 | 100.0% | 11,655 | 100.0% |
2015年も2016年も、ワースト10が全体の約80%を占めています。47有る都道府県のうち10だけで全体の8割を占めているわけですから、残りの都道府県は何だかとても平和な感じがしますね。
また、各都道府県の自動車保有台数(二輪車は除く)と盗難台数との関係を見てみると、以下の通りとなりました(2016年のみ。)
都道府県 | 盗難件数 | 保有台数 | 割合 |
---|---|---|---|
茨城 | 1,590 | 2,511,383 | 0.063% |
大阪 | 1,577 | 3,524,702 | 0.045% |
千葉 | 1,538 | 3,480,793 | 0.044% |
愛知 | 1,349 | 5,010,772 | 0.027% |
埼玉 | 914 | 3,897,525 | 0.023% |
神奈川 | 639 | 3,713,298 | 0.017% |
栃木 | 415 | 1,655,608 | 0.025% |
三重 | 370 | 1,463,257 | 0.025% |
兵庫 | 351 | 2,875,204 | 0.012% |
東京 | 309 | 3,956,890 | 0.008% |
その他 | 2,603 | 45,845,351 | 0.006% |
合計 | 11,655 | 77,934,783 | 0.015% |
(参考:自動車検査登録情報協会)
ワースト3の都道府県は、盗難件数の所有台数に占める割合が他と比べると若干高くなっていますね。特に茨城県は、約2,000台に1台が盗まれているという計算になります。ここまで盗難に遭う確率が高いと、どこに止めていても落ち着かないですね・・・。
注:車が登録している地域内で盗難に遭うとは限らないので、都道府県毎の保有台数と盗難件数の比較は参考程度にして下さい。
盗難車両の検挙率
盗難被害に遭った場合、どれくらいの確率で加害者は捕まると思いますか?また、車は被害者のもとに戻ってくるのでしょうか?
この点、例えば平成27年は13,821件が車両の盗難として認知されていますが、検挙されたのは6,312件と45.6%です。つまり全体の半分弱の犯人は捕まるという事ですね。しかし、これは盗まれた車が半分くらいの確率で手元に戻って来る、という意味では有りません。
上述の通り、盗まれた車はどこかに売られたり犯罪に使われたりする事が殆どなので、自分の手元に戻って来る事は基本的に有りません。
警察に盗難被害を出したからと言って、その車を血眼になって探してくれるという訳ではないので、車を盗まれたら諦めた方が良いでしょうね・・・。
特に軽自動車は簡単に名義変更が出来るので、盗まれた後で手元に戻って来る確率はさらに低くなる事が考えられます。
まとめ
いかがでしたか?
盗難に遭いやすい車種や地域などについて分かりましたね。とはいえ「盗まれやすい車に乗らない」、「盗まれやすい地域に住まない」といった事は現実的ではありません。
実際に皆さんが出来る事と言えば「盗難防止の対策を怠らない」という事でしょうね。加えて、車が盗難に遭った場合は、速やかに警察に報告し一時抹消登録をして下さい。
車が盗難された後の対応~警察への報告と一時抹消(廃車)手続き