中古車の売買をする際、取引相手がディーラー等の様に車に詳しい方であれば良いのですが、個人売買の場合は車に詳しくない人と取引をせざるを得ない時が良く有ります。こういう場合、後々問題が発生することが多いのが実状です。
個人間売買で車を売る時(買う時)によく起こるトラブルと対応策
特に「車を買ったけど、故障していて動かないからお金を返して欲しい!」、「車を売ったのに、代金を支払ってくれない!」といった金銭的な問題はよく起きます。この様なトラブルの場合は、法的手続きによって解決するのも1つの手ですね。
取引の相手方を訴えることになった場合、金額にもよりますが簡易裁判所で「少額訴訟」を起こす、という方法があります。ここでは、少額訴訟の費用や流れなどについて見ていきましょう。
少額訴訟とは?
訴訟と言うと、何だか手続きが面倒くさそうだし、弁護士に依頼したりと中々一歩踏み出すのに躊躇してしまいがちですよね。
少額訴訟は、訴訟の一種ですが全く別物で、読んで字の如く「少額な場合の訴訟」です。訴訟の目的となる価額が60万円以下の場合に提起出来る訴訟で、通常の訴訟と比べると簡単な手続きですぐに終わらせる事が出来ます。
注:訴訟をしても、車を返してもらうなど「物の引き渡し」を請求する事は出来ません。また、同一の簡易裁判所に対しては年間10回までしか少額訴訟の申立は出来ません。
少額訴訟の流れ
以下で、少額訴訟の流れを簡単に見ていきましょう。
- 訴えを起こす方(原告)が裁判所に訴状や証拠書類を提出します。
- 受理されると、裁判所は訴えられた方(被告)に訴状や期日呼び出し状、証拠書類を送付します。
- 被告は訴状などを元に答弁書や証拠書類を用意し、裁判所に提出します。
- 受理されると、裁判所は被告の答弁書や証拠書類を原告に送付します。
- 原告・被告共に追加の証拠書類や証人が必要であれば期日までに準備します。
- 原則として1回の審理で判決や和解の結論が出ます ※
※:控訴は出来ませんが、1度だけ異議申し立てをすることが出来ます。また、審理が終わるまでに被告から通常訴訟へ進む事を希望された場合、従う必要があります。
どこの裁判所で手続きをする?
訴訟は、訴える相手方の住所を管轄している簡易裁判所で起こす必要があります。もし、相手の現住所が分からない場合は、判明している最後の住所を管轄している簡易裁判所で手続きをすることになります。
なお、裁判所の管轄区域は裁判所のホームページで調べることが出来ます。
申立に必要な書類等
少額訴訟を提起するには、以下の資料を簡易裁判所に提出する必要があります。
※1:正本は裁判所への提出用、副本は訴訟の相手方への送付用で、どちらも記名押印及び捨て印が必要です。訴状の定型用紙は裁判所に備え付けられています(売買代金請求や金銭支払請求については、裁判所のホームページに雛形と記載例があります)。
※2:一般的な証拠書類としては、契約書や請求書、見積書、領収書、メールのやりとりや録音した電話音声などがあります。審理は一度限りなので、それまでに集められるだけの証拠資料を集めましょう。
少額訴訟に必要な費用は?
少額訴訟の手続きは簡単なので、弁護士や司法書士などにお金を払って依頼する必要はありません。必要な費用としては、以下の物があります。
- ①印紙代
- ②郵送料(切手)
- ③強制執行費用
①印紙代
少額訴訟を起こす場合の手数料のことです。手数料は現金で支払うのではなく、印紙を購入して渡すことになります。
必要な手数料は、訴訟の目的となっている価額によって以下の様に異なります。
目的の価額(円) | 手数料(円) |
---|---|
10万まで | 1,000 |
20万 | 2,000 |
30万 | 3,000 |
40万 | 4,000 |
50万 | 5,000 |
60万 | 6,000 |
また、相手方が法人の場合は登記事項証明書が必要なので、別途法務局で500円程度の印紙代かかります。
②郵送料(切手)
少額訴訟の申立手続きでは、被告への書類発送などの為の郵便切手を裁判所に渡す必要があります。金額や切手の組み合わせは、裁判所によって異なるので実際に手続きを考えている裁判所に問い合わせる様にして下さい。
参考までに、東京簡易裁判所に申立をする際に必要な郵便切手は3,980円で、組み合わせは以下の通りです。
切手額(円) | 枚数(枚) |
---|---|
500 | 5 |
100 | 5 |
82 | 5 |
50 | 4 |
20 | 10 |
10 | 15 |
2 | 5 |
1 | 10 |
(参照元:裁判所(郵便切手一覧表)
③強制執行費用
少額訴訟で勝訴判決が出たからといって、相手がお金を支払ってくれるとは限りません。支払ってくれない場合は、相手の財産を差し押さえる(強制執行)することになります。
強制執行をする場合、以下の費用が必要となります。
項目 | 費用・金額 |
---|---|
印紙代 | 1債務者毎に4,000円 |
切手代 | 4,000円〜5,000円程度(裁判所により異なる) |
送達証明書費用 | 150円(内容は後述します) |
登記事項証明書費用 | 500円程度(相手が法人の場合に必要) |
強制執行時に必要な書類
強制執行が必要となった場合、裁判所に対して以下の書類を提出する必要があります。
- 少額訴訟債権執行申立書 ※1
- 債務名義正本(少額訴訟の確定判決書)
- 送達証明書 ※2
- 登記事項証明書(相手方が法人の場合)
※1:「申立書表紙(雛形・記載例)」「当事者目録(雛形・記載例」「請求者債権目録(雛形・記載例)」「差押債権目録(雛形・記載例)」を作成し、ホッチキスで閉じて提出します。
※2:強制執行を開始するには、債務者名義(確定判決書)の正本又は謄本が債務者に送達されている、ということを証明しなければなりません。この手続きは裁判所で出来ます(雛形・記載例)。
まとめ〜少額訴訟のメリット・デメリット〜
上記のまとめになりますが、通常の訴訟ではなく少額訴訟を提起すると、以下の様なメリットやデメリットがあります。
少額訴訟のメリット
- 手続きが簡単なので弁護士等に依頼する必要が無い
- 訴訟費用が安い
- 申立から判決までが2ヶ月程度と短期で解決出来る
- 審理が1回で終わるので裁判所に何度も行く必要が無い
少額訴訟のデメリット
- 判決に満足が出来なくても控訴が出来ない
- 1回の審理しか行われないので、その場で全てを出し切る必要がある
- 相手方に通常の訴訟を希望されると従う必要がある
- 支払猶予や分割払の条件付き判決が出ても従う必要がある
- 同一の簡易裁判所に対しては年間10回までしか申立が出来ない
出来れば、揉めずに取引が終わる事がベストですが、揉めてしまった場合は上記のメリットやデメリットを参考に、少額訴訟の提起も検討してみてはいかがでしょう。
コメント一覧
この記事へのコメントはありません。