サブプライムローン問題による業績悪化の波は、アメリカの自動車業界のみならず、日本の自動車業界にも押し寄せました。
業績悪化の原因は、サブプライムローン問題による「金融危機」と「円高」です。サブプライムローンの発生により、行き場を無くした投機マネーが、安全資産である「円」に集中し、一気に「円高」となってしまいました。
円高になると、輸出した自動車は売れにくくなってしまいます。(円高と輸出の関係は割愛させていただきます。)
サブプライムローンとは
まず「プライムローン」とは、信用力の高い人向けの住宅ローンを指します。主に公務員や会社員(複数年勤務)が対象のローンです。
このプライムローンに「サブ」が付くとどうなるのか?
サブには「下の」「下位の」などの意味が有ります。プライムローンよりも下という事は、信用力の無い人向けの住宅ローンが「サブプライムローン」となります。契約社員や新入社員などはここに該当するでしょうか。
サブプライムローンは、信用リスクが高い人向けのローンなので、金利は高くなります。ただ、ローンの仕組み的に、借りた当初は金利が低く・数年後に高くなるという仕組みだったので、低所得者でも借りやすいシステムになっていました。
さらに、当時のアメリカは、不動産バブルで住宅の価格が右肩上がりだったのです。
ローンを組む側は、金利の低い時はローンを支払い、金利が上がる直前に住宅を売ってローンを返済しようと考えます。また、貸す側も、返済が滞っても住宅を売却すれば回収出来ると考えました。その結果、信用力の無いアルバイトや借金を抱えている人にまでローンを提供し始めたのです。
バブル崩壊
住宅価格が上昇している時は、みんながWIN-WINの関係ですから、誰も困りません。しかし、不動産バブルの崩壊とともに住宅価格が下落すると、事態は急変します。
住宅を売却してローンを返そうとしても、ローンを組んだ時よりも住宅価格が下がっているので、借金だけが残ります。また、住宅に住み続けてローンを返済していくとしても、金利が高くなっているので返済が厳しくなりました。
その結果、破産する人が続出します。そして、お金を貸していた銀行には「回収出来ない債権」と「値の崩れた住宅」が残ります。こうなると体力の無い銀行から次々と倒産していく事になります。これが「サブプライムローン問題」です。
世界的金融危機の原因に
さらに、サブプライムローン問題は世界的金融危機の原因となります。
返済が滞る可能性のあるリスクの高いサブプライムローンを、様々な資産と組み合わせてリスクを平準化し、証券として販売し始めたのが事の発端です。この証券を世界中の投資家が購入します。(日本の銀行などはバブルの経験を活かして、あまり手を出さなかったようです。)
そして、サブプライムローン問題が表面化してくると、証券の価格も下がり始めます。この証券のやっかいな所が、さきほども説明したように様々な資産と混ざり合っている事です。
証券の価格が下がった時に、自分の証券にサブプライムローンが含まれていた事に気付くわけです。すると、自分の保有している証券に「サブプライムローンが含まれているかもしれない」という不安が投資家を「売り」に走らせます。サブプライムローンが含まれているかどうかに関わらずです。
その結果、小さな金融機関から倒産していきます。さらに、インパクトが大きかったのが「リーマン・ブラザーズ」の倒産です。この倒産で、株価の暴落に拍車がかかります。
銀行も企業もどんどん倒産していってしまったのです。これが世界的金融危機となった「リーマンショック」です。
金融危機前後の自動車販売台数の推移
世界的金融危機は、日本の自動車業界も他人事では有りませんでした。
日本の自動車業界にどれだけの影響を及ぼしたのか?金融危機前後の新車販売台数(日本国内)の推移を見てみましょう。
販売車種は乗用車・トラック・バスが含まれています。
サブプライムローン問題が発生し始めた2007年には、ホンダ・ダイハツ以外のメーカーの販売台数が落ち込み始めます。そして、金融危機が発生した2009年には、ホンダを除くメーカーの販売台数はガクッと低下していますね。
さらに、メーカーは在庫調整を行うために、生産台数を減少します。すると、製造工場の稼働率は低下し、労働力が余剰します。この労働力をメーカーはどうしたか?労働者派遣規約を打ち切っていくわけです。いわゆる「派遣切り」です。
サブプライムローン問題は、販売台数の低下による自動車企業の経営の悪化だけでなく、労働問題にも発展する形で日本に影響を及ぼしました。
派遣労働の問題は、サブプライムローン問題とは独立した問題ですが、金融危機によって表面化したと言えます。
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