2009年の金融危機によって、ビッグスリーのうちフォード以外の2社(GMとクライスラー)は破産法を申請しました。しかし、フォードだけは政府の支援を借りる事なく、自力で荒波を乗り越えて再建していきます。
なぜフォードは経営破綻せずに生き残る事が出来たのでしょうか?
フォードが経営破綻しなかった理由
最大の理由は、金融危機が深刻化する前に「適切な経営判断」を行った事に有ります。
■主な経営判断
- 自社ブランド(ジャガー・ランドローバー)の売却
- 金融機関から230億ドルの資金調達 等
リストラを行い、手元資金を増やした事で、未曾有の金融危機に耐える事が出来たのです。また、債権者から約1兆円の債務免除を受けた事も経営破綻をしなかった要因の一つでしょう。
経営破綻をしなかった事で、フォードの「信用」「ブランド」は傷付かずに済みました。販売数を金融危機後も維持出来たのはまさに信用のおかげです。
しかし、政府の公的資金の支援を受けなかった事で、財政面は困窮する事になります。
1979年にマツダの経営危機の際に取得したマツダ株のほとんどを売却するなど、資本提携の解消・資産の売却と厳しい状況にあった事は間違い有りません。(2015年11月のニュースによれば、マツダ株を全て売却して36年に及び資本提供を完全に解消したそうです。)
こういった苦難を乗り越えて2008年から2009年にかけて発生した金融危機以後、フォードは順調に経営を立て直していきます。
会計期間 | 純利益 |
---|---|
2010年 | 65億ドル |
2011年 | 202億ドル |
2012年 | 56億ドル |
2013年 | 30億ドル |
2014年 | 5200万ドル |
金融危機から見事に回復したフォードの企業戦略は、どういったものなのでしょうか?
フォード2020ビジョン
2014年9月に発表された「フォード2020ビジョン」の主な内容は以下の通りです。
- 2020年までに世界新車販売台数を940万台に
- 自動車事業の営業利益率を8%に 等
2013年のフォードの世界新車販売台数は約630万台です。目標の940万台に到達するには、2013年比で310万台増、割合にして約50%も増やさなければいけません。生易しい目標では有りませんが、フォードの「覚悟」と「自信」の表れかもしれませんね。
このビジョンの根底には、金融危機後から推進されている「ワンフォード」という経営戦略が有ります。
ワンフォードとは?
ワンフォードとは、同一モデルを世界で販売する戦略を言います。
金融危機以前は、各地域ごとに製品開発を行い、販売が行われていました。販売地域に適した製品を開発・販売する事は、グローバル経済の基本かもしれません。しかし、開発に投入した資源や収集した情報を地域別で保管したままにしておく事は、非常に勿体無いわけです。
そこで、フォードは地域ごとに収集した情報資源を集約し有効活用して、世界同一モデルを開発し、各地で販売していく経営方針を推進していきます。
もちろん全車種が対象ではなく、収集した情報から世界的に必要とされている車種に絞って開発します。
その第一弾の車種となった「新型フォーカス」は世界で約102万台も販売されました。
ただ、フォード2020ビジョンを発表した2014年の世界新車販売台数は、約630万台とほぼ横ばいの結果になっています。2020年にフォードがどのような結果を残しているのか?楽しみですね。
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