1998年に「ダイムラー・ベンツ」と「クライスラー」が対等の立場で合併し「ダイムラー・クライスラー」が誕生しました。高級車としての確固たる地位を得ているベンツを所有するドイツの「ダイムラー」と、アメリカのビッグスリーの一角を担う「クライスラー」の合併は、「世紀の合併」と言われました。
この合併は世界の大手メーカー同士の合併や資本提携が加速するきっかけとなりましたが、2007年に合併を解消してしまいます。
なぜこの両社は合併を解消してしまったのでしょうか?
合併を解消した原因
世紀の合併の目的は、「生産・販売台数」の規模を大きくする事に主眼がおかれていました。つまり、ただくっついて両社の「生産・販売台数」を合算して大きく見せようとしたわけです。
そもそも、対等合併は互いの強みを活かした「相乗効果」が発揮されるものでなければいけません。
「ダイムラー・ベンツ」と「クライスラー」の合併においても、両社の開発・生産・販売等のノウハウを活かして「コスト削減・効率化」を行えたはずです。また、「ドイツ」と「アメリカ」という地の利を活かして、グローバル展開もスムーズに行えたはずなんです。
しかし、世紀の合併では「生産・販売台数の足し算」のみで「両社の協力による掛け算」である相乗効果は、あまり生まれませんでした。
世紀の合併は世紀の失敗へ
相乗効果が生まれなかった大きな原因の1つとして「ドイツとアメリカでは経営手法が異なる」という点が挙げられます。ダイムラーは会社と労働者の関係を大切にするドイツ型の経営、クライスラーはアメリカらしいトップダウン型の経営です。また、企業文化の違いも有ります。
合併はこういった会社の経営手法や企業文化の違いも考慮して、合併後も円滑に事業が行われるように計画・統合していかなければなりません。規模を大きくするだけでは上手くいくはずがないのです。
また、合併当初は対等であった両社の関係も、時間が経つにつれてダイムラーが支配力を強めて行くことになります。「社長・重役」のポストはダイムラー側の人間で占められるようになりました。その結果、クライスラー側の人間はどんどん社を去っていき、円滑に事業展開を行えず、「世紀の合併」は解消される事になります。
合併を解消する際に「ダイムラー・クライスラー」は、クライスラー部門の株式を売却したのですが、売却価格はたったの約60億ドルでした。合併の際にクライスラーに投資した額は「約400億ドル」とも言われており、かなりの痛手を被った事になります。
ダイムラー・ベンツとクライスラーの「世紀の合併」は「世紀の失敗」と言えるでしょう。
その後の両社の動向
ダイムラーは2000年に「三菱自動車」と2001年に「現代自動車」とも資本提携を行います。しかし、これも失敗に終わり2004年に現代と、2005年にはリコール隠しなどの影響で低迷してしまった三菱自動車と資本提携を解消します。
その後、2010年に「日産・ルノーグループ」と資本提携を行います。失敗続きのダイムラーなので、この資本提携も失敗に終わるのではないか?と考える人も多いかもしれませんね。
また、クライスラーは2008年~2009年の世界金融危機で破産申請をし、その後イタリアの「フィアット」の完全子会社となります。
コメント一覧
この記事へのコメントはありません。