「新車を買ったら、ならし運転をした方がいいのか」この質問にあなたは答えられますか?
もしかしたら「ならし運転」という言葉について、よくわかっていないかもしれませんね。
ならし運転とは新車を長持ちするための、「準備運動」のようなもの
大切な新車ですから、長持ちしてほしいもの。
だからこそ、「新車にならし運転は必要かどうか」という議論は未だに白熱しています。
ネットで検索してみるとわかりますが、昨今では「ならし運転は必要」という主張をする記事が多いです。
しかし、あえていいましょう。「ならし運転は不要」です。
実際に「トヨタ」「ホンダ」「三菱」「スズキ」と、名だたる大手自動車企業がホームページ上で「ならし運転は不要」だと明確に断言しています。
だからこそ「ならし運転」をするぐらいなら、新車に「慣れる運転」をするのをオススメします。
クルマを”慣らす”ことばかりにかまけて、クルマに”慣れる”ことを怠れば、新車をうまく運転することができません。
運転ミスを起こしてぶつかったり、最悪の場合は事故・・・なんて本末転倒もありえます。
本当の意味でクルマを長持ちさせたいなら、慣れる運転を意識するようにしましょう。
今回の記事では、「ならし運転」の基礎知識や必要性とともに、クルマに慣れるためのコツについて解説していきます。
元・クルマ雑誌の編集者である筆者が取材で得た知識をわかりやすく解説していきますので、どうぞ最後までご覧ください。
ならし運転の目的・具体的な方法
なぜ「ならし運転は不要なのか」を知るためには、ならし運転の目的や具体的な方法についての理解が必須です。
まずは、ならし運転の「基礎中の基礎」の知識について解説していきましょう。
もちろん「もう、ならし運転の方法は知っている」「ならし運転が不要という理由が先に知りたい」という人は、次の章まですっ飛ばしてもらって構いません。
ならし運転の目的
ならし運転について調べてみると、色々と小難しいことが書かれており、「なぜすべきなのか」という目的を理解するのも大変です。
そこで今回の記事では、難しい用語は使わずに、極力シンプルな言葉で解説していきます。
ならし運転の目的は、冒頭でもお伝えしましたが、シンプルに「新車を長持ちするための準備運動」です。
人間がいきなり激しい運動をしてしまうとケガをしてしまうのと同じで、クルマも準備運動が必要というわけです。
具体的にはクルマの場合、「フリクション」と呼ばれる“抵抗”を減らすために準備運動(=ならし運転)をします。
新車はパーツをくみ上げたばかりで個体差があり、各パーツが完全に調和しているわけではありません。
調和どころか、それぞれのパーツが抵抗してしまい、フリクションが発生してしまいます。
フリクションはパーツ同士が擦れて起こる「摩擦抵抗」、エンジン内のピストン(上下運動)が起こす「慣性抵抗」、サスペンションが伸び縮みする時に発生する「屈曲抵抗」とさまざま。
新車の場合は、これらの抵抗に車体そのものが“慣れて”いないので、その名の通り「ならし運転」が必要になるわけです。
ならし運転をしているうち、車体の各種抵抗は低減されていき、よりスムーズに、より燃費をかけずに運転することが可能になります。
筆者は、大手自動車メーカーが書いている通り、ならし運転は不要だと思っていますが、ならし運転のやり方を知りたい人がいると思いますので説明していきます。
不要だと思う方は「なぜならし運転が不要なのか徹底解剖」へ進んでください。
ならし運転の具体的な方法
人間だと準備運動はストレッチやラジオ体操などがあり、どれが「準備運動」だと断言することは難しいですよね。
ならし運転も同じで、人によって解説している方法が違います。
そこでクルマの知識を聞くうえで、信頼の置ける相手の一つである自動車企業の力を借りましょう。
超大手自動車企業である「日産」のホームページに、ならし運転の方法が載っているので引用してみます。
- エンジンの回転数を4,000rpm以上に上げない。
- アクセルを完全に踏み込んで走行しない。
- 急発進は避ける。
- 可能な限り急ブレーキは避ける。
※出典:日産ホームページ「8.1ならし運転」より
書いてあることは、至って普通です。
どちらかというと、燃費を節約するための「エコ運転」の方法そのものといってもいいでしょう。
よくわからないのは「エンジンの回転数を4,000rpm以上に上げない」という部分。
実はエンジンの回転数は「タコメーター」という装置によって把握することができます。
しかし昨今のクルマはタコメーターを排除しているタイプが多く、確認するとなると自分で改造することに。
数万円のタコメーターを買ったあとに、自力で取り付けるなんて、ちょっと現実的ではないですね。
目安としては、時速100キロ以上だすと、間違いなく4,000rpmになると思っていてください。
慣らし運転は高速道路の利用がオススメ!
ならし運転は「安定した速度での運転」が良いと言われています。
安定した速度で走行することで、エンジンの回転は一定になり、燃焼条件も安定し、水温も上がりにくくなるためです。
しかし、安定した速度で走り続けることは都会の一般道ではなかなか難しいかもしれません。
そこで、都会に住んでいる方には少しお金はかかりますが、高速道路で慣らし運転をすることをオススメします。
また、以下の様に少なくとも1,000キロ程度までは慣らし運転を実行することをオススメします。
購入時〜500キロくらいまで
オートマ車の場合はDレンジ(ドライブモード)で、マニュアル車の場合はトップギアで時速80キロ程度までゆっくり加速。このときに、アクセルを一気に踏んで回転数をむやみに上げない様に心がけて下さい(回転数2500回転くらいを目安に)。
特にオートマ車の場合は、アクセルを一気に踏むとキックダウン(自動で低ギアに変わり加速する)します。
これはエンジンに負担が掛かるので避ける様にしましょう。
1,000キロ前後
時速100キロを目安に、加速も無理をしない程度(回転数3500回転くらいを目安)に走行する様にしましょう。
走行が1,000キロを超えたら、1度エンジンオイルの交換をしましょう。
最近では3,000キロや半年毎のエンジンオイル交換を推奨する傾向がありますが、あくまでも長く乗り続けることを前提とした慣らし運転をする訳なので、エンジンオイルも早期に交換するに超したことはありません。
1,000キロを超えた以降は、500キロ毎に回転数を500ずつ増やすイメージで慣らし運転を続け、理想としては2,000キロくらいまでは慣らしていきたいところですね。
なぜならし運転が不要なのか徹底解剖
ならし運転の目的と方法について確認してもらったところで、本題に入りましょう。
もう一度いいますが、「ならし運転は不要」です。
なぜ不要なのかという理由は明白で、主要な自動車メーカー自ら「要らない」と言っているからです。
主要メーカーは声をそろえて「ならし運転は不要」と公式回答
ホームページ上にて「ならし運転が不要」だと明確に回答しているのは、以下の4社です。
- トヨタ
- ホンダ
- スズキ
- 三菱自動車
これだけのメーカーが「ならしは不要」と言っているわけですから、「不要」と結論づけるには十分過ぎるでしょう。
なお、各社の回答をざっと引用すると、以下の通りになります。
トヨタ
ならし運転の必要はありません。ごく一般的な安全運転に心がけていただければ、各部品のなじみは自然と出てきます。
お客様が新しい車に慣れられるための期間をならし運転の期間と考えてください。
※出典:トヨタ「ならし運転はした方がよいですか?」より
ホンダ
現在の車は、エンジンやその他の部品精度が向上しているため、ならし運転を行う必要はありません。ただし、機械の性能保持と寿命を延ばす為には以下の期間はエンジンや駆動系の保護の為に、急激なアクセル操作や急発進を出来るだけ避けて下さい。
※出典:ホンダ「クルマのならし運転は必要ですか。」より
スズキ
現在販売しているスズキ車は、特にならし運転の必要はありません。ならし運転はお客様が新しい車に慣れるまでと考え、急発進・急ブレーキなどを避け、安全運転を心がけてください。
※出典:スズキ「ならし運転は必要ですか?」より
三菱自動車
基本的にはならし運転はしなくても、お車をご使用頂くうえでの支障はございません。
ただし、より長く良いコンディションを維持して頂くためには、新車1ヶ月点検までは急な加速や激しいシフトチェンジなどは避け、エンジンの回転数や速度を抑えて走ることは有効です。一般的な目安としては、エンジン回転が3,000回転以下、車速は80km/h以下程度と言われています。
※出典:三菱自動車「メンテナンス」より
唯一「ならし運転を推奨」と回答したのは日産
これだけ早々たる自動車メーカーが否定している中で、1社だけ「ならし運転を推奨」と回答している会社が「日産」です。
公式ホームページにて、ならし運転について以下のように回答しています。
走行距離が1,600kmに達するまでは、エンジン性能を最大限に引き出し、お車の信頼性と経済性が実現されるよう、次の推奨事項に従ってください。推奨事項に従わないと、エンジン寿命が短くなり、エンジン性能が低下するおそれがあります。
※出典:日産ホームページ「8.1ならし運転」より
明確に「必要」と言っているわけではありませんが、「推奨」とは回答しています。
ただ、気になるのはこの回答が2012年8月になっていること。
「今」の日産はどう思っているのか気になったので、日産のディーラーに行って聞いてみました。
日産の整備担当も「ならし運転は不要」と回答
忙しい中、整備担当のYさんに時間を作ってもらい、「新車にならし運転は必要ですか?」と聞いてみました。
すると、返ってきた回答は「不要です」と一言。
「現在のクルマは慣らさないと不具合が出るようなパーツ構成でもないですし、部品ひとつひとつもクオリティが高いので、ならし運転を積極的にする必要はありません」
・・・なるほど。では日産のホームページに「推奨」だと書いてあるのはどういうことなのでしょうか。
「ならしが推奨なのは間違いありません。ただ、自発的にする必要はないということです」とのこと。
最後に「どちらかと言えば、ならし運転よりも自分がクルマに慣れる運転の方が大事ですよ」と言ってくれました。
これは筆者的にもすごく腑に落ちたアドバイスでしたね。本当にその通りだと思います。
取扱説明書にもならし運転の記載はなくなった
また、最近の車はエンジンが技術的に進歩していて、慣らし運転をしなくても性能が低下することは無いと言われています。
以前は車の取扱説明書に慣らし運転についても記載があったのですが、最近の新車の取扱説明書には記載がされなくなっている事からも、慣らし運転の重要性は低くなったと考えられているのでしょうね。
確かに、近年の車を取り巻く技術は勢いよく発展していますが、それでもエンジン内部で金属同士が触れ合う箇所が無くなったという訳ではありません。
以前ほどには慣らし運転の必要性は無いかもしれませんが、それでも新車を長く乗り続けようと思うのであれば、しっかりと最初に「慣れる運転」をしましょうね。
「ならし運転」よりも大切な「慣れる運転」とは
自動車メーカーはどこも「積極的な“ならし運転”は不要」だと回答しています。
これだけで「ならし運転をわざわざする必要はない」という理由としては十分すぎます。
どちらかというと、ならし運転ではなく、慣れる運転の方が重要なのでしょう。
トヨタのホームページの回答や、日産の整備担当Yさんの助言と言うとおりです。
クルマを”慣らす”ことばかりにかまけて、クルマに”慣れる”ことを怠れば、新車をうまく運転することができません。
運転ミスを起こしてぶつかったり、最悪の場合は事故・・・なんて本末転倒もありえます。
本当の意味でクルマを長持ちさせたいなら、慣れる運転を意識するのがベストでしょう。
新車になれるために意識すべきポイントは3つ
では、どうすれば新車にすぐに慣れるのでしょうか。
忙しい中、日産のYさんにアドバイスをいただきました。
Yさんいわく、新しいクルマで注意しなければいけないのは以下の3点。
- クルマのサイズ感
- クルマの操作方法
- アクセル、ブレーキの感度
「サイズ感」とは縦と横の幅がどれくらいあるかということで、コンパクトカーからワゴンに変えたりした時は特に要チェックになります。
また「操作方法」とは、エンジンの入れ方から、サイドミラーの調節方法、どうすればバックになるのか等の操作です。
旧式から最新型にすると、エンジンの入れ方すらわからないことはよくあることですね。
そしてアクセル・ブレーキの感度とは、どれだけ踏めばどれだけ進む・止まるのかということ。
軽自動車から普通車になったりすると、全然感度が変わってきます。
クルマに慣れるためには「駐車」を練習すればいい
整備担当のYさんいわく、前述した3つの要素を一気に確認したいなら、「駐車」を練習するのが効率的、とのこと。
確かに駐車は「サイズ感」「操作方法」「感度」の3要素全てを確認しないと、まともにできません。
上手に駐車するには、3つ要素を確実にコントロールする必要があります。
公園の駐車場など慎重に駐車の練習が出来る場所に行って、ぜひ練習してみてください。
きっちりとスムーズに駐車できるようになれば、あなたは新車に”慣れた”ことになります。
安心して公道に出て大丈夫ですよ。
まとめ
以上、「ならし運転は不要」「ならしより慣れる方が重要」とお伝えしました。
現在のクルマは精度高く作られているので、意識して「ならし運転」をする必要はありません。
ならし運転の本来の目的である「クルマを長持ち」させたいのであれば、まずは新車の扱いを完全にマスターすることです。
駐車練習を何回行って、新車を自由に操れるようになってから、本格的に走ることを心がけてください。
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