自動車技術は目まぐるしく進化しています。ひと昔前はガソリン車しか走っていなかったのに、気付けばハイブリッドカーや電気自動車なども走行しています。
近年、各メーカーは競うように電気自動車の技術開発に力を注いでいます。そこで今回は電気自動車の技術の1つ「インホイールモーター」について紹介したいと思います。
インホイールモーターとは?
インホイールモーターとは、駆動輪のホイールの内側又はその近くに電動モーターを配置し、直接又は通常よりも短いドライブシャフトによってタイヤに動力を伝える仕組みを言います。
構造
従来の電気自動車の構造はエンジン車とほぼ同じような構造をしています。日産から拝借してきた下の画像の左側が従来型です。一方、インホイールモーターを採用した車両の構造は、下の画像の右側となります。前述したようにタイヤのすぐ近くにモーターが配置されていますよね。
(出典:インホイールモーター | 日産|技術開発の取り組み)
このようなインホイールモーターの構造により多くの利点が生まれます。
インホイールモーターの利点
インホイールモーターを採用する事で生まれる主な利点は以下のようなものです。
- エネルギー伝達効率の上昇
- 駆動輪の独立制御による操作性の向上
- 四輪駆動車で有れば、四輪操舵により平行移動やその場での方向転換も可能 等
■エネルギー伝達効率の上昇
従来型のモーターの配置では、モーターで生み出した動力をドライブシャフト等を介して駆動輪に伝えるため、どうしてもエネルギーのロスが生じてしまいます。
しかし、インホイールモーターなら駆動輪へ直接又はほど直接動力を伝える事が出来るので、エネルギーのロスを防ぐ事が可能になります。そのため、インホイールモーターは従来型よりも航続可能距離が伸びる利点が有ります。
■駆動輪の独立制御による操作性の向上
先ほど見た画像のように、駆動輪毎に1つのモーターを配置するので、それぞれの駆動輪を独立して制御する事が出来ます。
これにより、例えばハンドルを左に切った時には、外を回る右側の駆動輪のトルク(力)を大きくし、内を回る右の駆動輪のトルクを小さく制御する事で、右へ進む力を生み出す事が出来ます。下の画像を見て貰った方が分かりやすいかもしれませんね。
(出典:日産)
このように、インホイールモーターはハンドル操作に対するレスポンスが抜群に良くなる、という利点が有ります。
■平行移動やその場での方向転換も可能になる
電気自動車に限らず、従来のドライブシャフトを利用して駆動させる自動車では、タイヤの左右への切れ角に限界が有ります。ハンドルを一生懸命片方に回しても途中で止まってしまいますよね。
インホイールモーターでは、タイヤを進行方向に対して直角にまで切る事が出来るので、下の動画のように平行移動やその場で回転する事も可能になります。
インホイールモーターの欠点
残念ながら利点ばかりでは有りません。インホイールモーターにも欠点は有ります。欠点というよりも課題と言った方が正しいかもしれません。
1つ例を挙げると、インホイールモーターでは、タイヤに直接又はごく近くにモーターを配置するため、路面からの衝撃がモーターに直に伝わってしまうという欠点が有ります。
電気自動車のモーターはガソリン車にとってエンジンのような物です。そのモーターが壊れやすいとなれば、誰も欲しがりませんよね。そのため、モーターの耐久性の向上は急務の課題です。
また、モーターがタイヤとほぼ同じ高さに有るので、浸水や異物の影響を受けやすくなります。これも課題と言えますね。
その他にもいくつか欠点が有り、それらを克服していかなければ、モーターショーには出せても量産体制には入れないかもしれませんね。以上、インホイールモーターについてでした。