「闇車検」って聞いた事は有りますか?
「裏車検・ペーパー車検・違法車検」などとも呼ばれているのですが、普通に生活をしているとなかなか耳にしない単語ですよね。
ただ、聞いたことがなくても”闇”が付くので「何か悪そうな行為だな」って思いません?その通り、闇車検は違法行為です!
現在、闇車検に対する取り締まりが強化され、その数は減少したと言われています。しかし、そもそも「闇」の中で密かに行われる行為なので、おそらく今もなお毎年数百台いや数千台は闇車検を受けていると言っても過言ではないでしょう(個人的推測)。
では、この闇車検とは一体どういったものなのでしょうか?ここでは闇車検がどういうものなのか、その仕組みや罰則、バレる可能性などについて見ていきましょう。
闇車検(不正車検)とは?どんな仕組みになっている?
闇車検とは、通常の車検には通らない車を、不正改造や整備不良などの状態のまま車検に合格させる不正行為の事を言います。
正常な車に対して整備・検査をせずに車検証を発行するパターンも有ります。もちろん、これも不正行為です。
正規の車検では、道路運送車両法に規定されている「安全基準」を満たすように点検・整備をし、検査を受けます。検査に合格すれば書類手続きをして車検証が発行されるのですが、検査に不合格だった場合は、再点検・整備をした上で、再度検査を受けなければなりません。
闇車検では、正規の車検で行われる点検・整備・検査は一切行われません。検査に合格したものとして、書類手続きのみが行われ車検証が発行されます。そのため、どんな車でも車検を通る事が出来るのです。
参考:車台番号と走行距離だけは、車検証に記載されるのでチェックをする様です。
闇車検を利用するのは、主に違法改造をしている車に乗っている方や整備不良の車に乗っている方ですね。
参考:鬼キャン(タイヤの角度を改造して、ガニ股の様にしている車)は車検に通らないので闇車検を利用する方が多い様です。一方、エンジンのボアアップ(排気量を上げる)をしている車は、車検証の記載事項の変更申請をすれば車検にはちゃんと通ります。変更申請せずに闇車検に出す方もいる様ですけどね。
違法改造車や整備不良の車は、そのままでは車検を通す事はできません。しかし、車検の基準をクリアする様に改造を元に戻したり整備するのは、お金も時間もかかります。そこで、「どんな状態でも車検に通してくれる闇車検を使おう!」と考える訳ですね。
悪徳業者によっては、車検証代わりになる「保安基準適合標章」を数分で発行する場合も有ります(後で車検証を交付)。
違法な闇車検はどこで行われている?
闇車検が行われる場所は、一部の指定整備工場です。指定整備工場は民間車検場とも呼ばれていますね。
指定整備工場とは、認証整備工場のうち車の整備や車検に必要な設備が有り、国家資格である「自動車検査員」が複数名在籍し、国(運輸支局)から指定を受けた工場を指します。
指定整備工場では、車検の検査自体は工場内で完結するので、運輸支局に車を持ち込む必要が有りません。運輸支局で行うのは、書類の手続きのみです。そのため、運輸支局が現車を確認する事は有りません。
こういった仕組みを利用して、一部の指定整備工場で闇車検が行われているのです。
闇車検の値段(費用)はどれくらいかかる?相場は?
闇車検にはどれくらいお金が必要となるのでしょうか?
闇車検は、整備・検査を一切行わず、運輸支局にて書類手続きをするだけです。書類手続きに必要な手数料は、普通車の場合1,800円です(申請書代や交通費など含めるともう少しかかります)。しかし、この手数料が闇車検の相場になるわけではもちろんありません。
闇車検は違法行為です。工場側はリスクを負う事になります(もちろん、依頼した側もリスクを負います)。そのため、書類手続きに必要な手数料とは別に「闇車検に対する報酬」が発生します。
闇車検の費用の相場は、数万円~十数万円と言われています。ただ、相場というよりかは、各業者の言い値となるでしょうね・・・。。1つ言えるのは、書類手続きに必要な手数料と比べると、かなり高額な金額を請求される事は間違いありません!
そういう意味では、もう元の状態には到底戻すことが出来ない程に改造してしまった車はともかく、少しお金をかければ車検に通すレベルに持っていける様な車は、闇車検を利用する事で逆に損をする羽目になりかねませんね。
車検に通らないのであれば、愛車の無料一括査定などを利用して高値で売却して新しい車を購入したほうが無難です。
闇車検をすると誰がどんな罰則を受ける?
「闇車検は違法です」と冒頭でも書きましたが、実際に闇車検をすると誰がどんな罰則を受けるのでしょうか?以下で見ていきましょう。
ここで紹介する全ての罰則を必ず受ける訳ではありません。あくまでも可能性の話です。
闇車検による罰則の対象者〜闇車検の利用者も罰せられる!〜
闇車検による罰則の対象者は以下の通りです。
- 指定整備工場
- 整備工場代表者
- 自動車検査員
- 車検依頼者
闇車検をした整備工場や検査委員だけでなく、闇車検を依頼した方も罰則の対象になっていますね。悪い事だと分かっていてお願いしている訳なので、当然といえば当然ですね。
闇車検の罰則(全対象者共通)
上記の全対象者に共通する罰則内容は以下の通り。
闇車検の罰則や処分(指定整備工場・代表者・自動車検査員)
上記の他に指定整備工場・代表者・自動車検査員は、「加重収賄(刑法第197条の三)」により1年以上の有期懲役の罰則を受けます。これに対し依頼した側は「贈賄(同法第198条)」により3年以下の懲役又は250万円以下の罰金です。
なお、民間の指定整備工場やその代表者、自動車検査員などは「公務員」とみなされるので、公務員に関する公文書や収賄などの刑法の罰則が適用されます(道路運送車両法第94条の七)。
また、指定整備工場は以下のような罰則も受けます。
- 3カ月以下の業務停止命令又は認証の取り消し(道路運送車両法第93条)
- 6か月以下の車検業務の停止命令又は指定の取り消し(同法第94条の八)
- 行政処分として工場名や処分内容などを2年間公表(行政処分の公開情報は国土交通省にて検索可能)
そして、自動車検査員は以下のような罰則を受ける可能性がありますね。
- 指定整備工場での職の解任(同法第94条の四の4項)
- 欠格期間(解任から2年間)(同法第93条の四の5項)
闇車検の罰則(依頼した客)
ヤミ車検を依頼した客は、上記の他に贈賄罪(刑法第198条)により3年以下の懲役又は250万円以下の罰金を受けることがあります。
これだけの罰則が規定されているわけですから、軽い気持ちで闇車検に手を出すものでは有りません。バレた時の事を考えたら・・・恐ろしいですね。
闇車検はバレる?
闇車検では、運輸支局などが現車を確認しない上に、書類上は通常の検査が行われた事になっています。そう考えると、闇車検である事はなかなかバレないように思えますよね。
しかし、実は以下のような理由で闇車検は簡単にバレてしまうのです。
- 競合他社や従業員、闇車検を受けた人の知人などの通報
- 警察の内定調査
- 闇車検を受けた車両が事故・違反をして、そこから警察の捜査を受ける 等
意外と単純な理由で闇車検はバレてしまうものです。従って、バレる可能性は十二分に有ると考えておいた方が良いでしょう。そもそも違法行為なので、バレるバレないの話をする事自体ナンセンスですけどね。
闇車検の摘発事例
闇車検は実際に行われており、そして警察に摘発もされています。
例えば、2015年1月には兵庫県の自動車整備会社が加重収賄などの疑い追送検されています。この業者は過去に計6,153台の闇車検をしていたそうです。依頼した人も贈賄などの疑いで書類送検されています。(参考:産経WEST)
元記事が削除されているためWEBアーカイブのリンクを貼っています。
闇車検を受けた時点ではバレないかもしれませんが、上記の摘発事例のように、いずれ後になって摘発されると考えておいた方が良いですね。一時的な支出を違法行為で抑えるのではなく、必ず正規の車検を受ける様にした方が良いでしょう。
【補足】闇車検をしている違法整備工場を見つけたら通報しよう!
闇車検をしている業者は、国土交通省等が見つけ次第処分していっていますが、それでも無くならないのが実情です。
そこで、近くの整備工場などで闇車検をしているのを見かけたら、通報する様にしましょう。
警察に届け出てもいいですが、国土交通省が闇車検の通報窓口を用意しているので、そちらを利用すればOKです。
指定自動車整備事業者における不正車検通報窓口のご案内(国土交通省)
最後に
違法な闇車検(ペーパー車検)がどういうものなのかについて解説して来ました。
違法な改造をしたら違法な方法で車検を通す、違法尽くしですね。絶対に闇車検はやめましょう、後で大変な事になりますよ。
ちなみに、闇車検に似たものとして「手抜き車検」があります。これは、一見すると普通の車検なのですが、必要な点検や整備をせずに適当に車検に通してしまう事です。いい加減な車検は受ける意味が乏しいので、多少お金がかかっても信頼できる業者を選んだ方が良いでしょう。