「サイドスリップテスト」が完了したら、指示に従い次のステップへ進みます。マルチテスターでの検査です。車を移動させる事なく、1つの検査機上で3つの検査を行います。
ここで行われる検査は「スピードメーター検査」と「ヘッドライト検査」と「ブレーキ検査」です。
古い検査ラインとして「全自動式」のタイプも有ります。このタイプでは検査機が別れているので、3つの検査を受けるために車の移動が必要になります。そのため、移動の手間が省けるマルチテスターの方がオススメです。
この3つの検査は、ユーザー車検全体の流れからするとまさに中盤です。ここを乗り越えるとゴールが見えてくるので頑張りましょう。
(出典:国土交通省)
では、スピードメーター検査・ヘッドライト検査・ブレーキ検査の内容について見ていきましょう。
マルチテスター・全自動式に関わらず、タイヤを検査機のローラーの上にきちんと乗せる事がとても重要です。ズレてしまうと検査が出来ません(不合格になる事も・・・)。後ろが詰まっていても、焦らずに車を移動させましょう。
なお、これらの検査もサイドスリップテストに引き続き、電光掲示板での指示となります。ユーザー車検に慣れていない人は近くに有るインターホンで「やり方が分かりません」などと検査官に伝えて下さい。検査方法を丁寧に教えてくれますよ。
スピードメーター検査
スピードメーター検査では、車に搭載されたスピードメーターに表示される速度の正確性を検査します。検査機のローラーの上で車を走行させて(タイヤが回転するだけ)、メーターが時速40kmに達した時の検査器との誤差を計測します。
合格基準は?
合格基準は、道路運送車両法の保安基準細目(速度計等)によると、製造年によって以下のように定められています。
- 平成18年12月31日以前に製造された車・・・およそ時速30.9km~時速44.4km
- 平成19年1月1日以降に製造された車・・・およそ時速30.9km~時速42.5km
検査が行われるのは「メーター表示で時速40km」時点の誤差だけです。そのため、例えばメーターが時速80kmを指した時に実速度が時速120km出ているなど、その他の速度表示でズレがあっても検査には合格します。
検査の流れ
電光掲示板の指示に従って、車をローラーの上に移動させます。この時、ローラー上にタイヤをセットする事が大切です。正確な検査の為でも有りますが、ズレているとタイヤがローラーから外れて事故を起こす危険が有るためです。
(出典:国土交通省)
車がローラー上に乗ったら、電光掲示板に「40kmでパッシング」などと指示が出ます。指示を確認し、ブレーキから足を離してアクセルを踏み、スピードメーターが時速40kmを指すまでゆっくり加速させていきます。
この時、ギアを「2(セカンド)」に入れてアクセルを踏み始めた方が滑らかに加速出来ます。あと、車が多少振動するので、ハンドルをしっかりと握っておいて下さいね。
なお、パッシングとは一瞬だけハイビームを点灯させる事を指します。ライトレバーを手前に引く事でパッシング出来ます。
スピードメーターが時速40kmを指したら、パッシングをして下さい。電光掲示板に「○」及び「停止」と表示されるので、ブレーキを踏みタイヤの回転を止めます。これでスピードメーター検査は終了です。
次の「ヘッドライト検査」の為にギアを「N(ニュートラル)」に入れておきましょう。
ヘッドライト検査
ヘッドライト検査では、ロービーム(すれ違い前照灯)の光度と光軸の検査が行われます。
平成10年8月31日以前に製造された自動車は、ハイビーム(走行用前照灯)での検査となります。4灯式の自動車は、検査前(又は検査ラインに入る前)にハイ・ロー両方点灯するヘッドライトをマスキングテープなどで覆って下さい(8割程度で構いません)。
合格基準は?
ヘッドライトの合格基準は、以下の通りです。
「カットオフ」とは、ロービームの上向きへの照射を遮る事を指します。また「カンデラ」とは、ヘッドライトの光度を表す単位を指します。
■ロービームの場合
(出典:長崎県自動車整備振興会)
■ハイビームの場合
ユーザー車検を行う前に、運輸支局の近くにある予備検査場で調整してもらうと良いかもしれませんね。もし、検査に不合格になったとしても、基本的に無料で再調整してくれます。
検査の流れ
スピードメーター検査が終了したら、車の前方にヘッドライトテスターが登場します。電光掲示板に「ヘッドライト検査」と表示されるので、ヘッドライトを点灯させましょう。
(出典:国土交通省)
あとはテスター自身が左右に動いて、両方のヘッドライトの光度・光軸を検査します。そして、電光掲示板に左右のヘッドライトのそれぞれの検査結果(合格なら「○」不合格なら「×」)が表示され、ヘッドライト検査は終了です。
なお、検査中はなるべく動かないようにして下さい。車内の振動がヘッドライト検査に悪影響を及ぼす可能性が有るためです。
ブレーキ検査
ブレーキ検査では、フットブレーキとパーキングブレーキ(駐車ブレーキ)の「効き」を検査します。
合格基準は?
ブレーキ検査の合格基準は以下の通りです。
測定基準が数値化されていますが、しっかりと整備しておけば、おそらく不合格になる事は無いでしょう。どちらかと言うと、ブレーキ性能よりも検査時のブレーキの踏み方で不合格になる事の方が多いです。
また、雨の日は要注意です。タイヤが濡れて、スリップによってブレーキが思うように効かなくなるからです。対処法は、サイドスリップテスト前に乾いた雑巾でタイヤを乾拭きしておく事。そのため、ユーザー車検を受ける日が雨だった場合は、乾拭き用の雑巾は必需品になります。
検査の流れ
電光掲示板に「ブレーキ検査」と表示されたら、検査の開始の合図です。ギアが「N(ニュートラル)」に入っているか、パーキングブレーキが解除されているかをチェックしましょう。
その後、ローラーが回転し始めます。電光掲示板に「ブレーキを踏む」と表示されるので、最初はじわーっとブレーキを踏み、そして最後に思い切り踏み込んで下さい(ベタ踏みです)。そして、電光掲示板に「ブレーキをはなす」と表示されるまで踏み続けます。
普段運転している時のような優しいブレーキワークでは、ほぼ不合格になってしまいます。ブレーキ検査はフルブレーキを掛けた時の効きを確かめる検査なので、注意して下さいね。
ブレーキ検査に合格していたら、電光掲示板に「○」と表示されます。不合格の場合でもあと1回チャンスが有るので、1回目より強くブレーキを踏み込みましょう。両足で踏んでも構いません。
フットブレーキの検査が終了したら、次はサイドブレーキ(駐車ブレーキ)の検査です。電光掲示板に「駐車ブレーキ検査」と表示されます。
要領はフットブレーキの時と同様です。テスターのローラーが回転し始めると、電光掲示板に「駐車ブレーキをかける」と表示されます。最初はゆっくりサイドブレーキを引き、最後に思いっきりかけます。
サイドブレーキテストも2回チャンスが有ります。
ブレーキテストが終了すると、サイドスリップテストを含めた4つの検査結果が電光掲示板に表示されます。
(出典:国土交通省)
A(アライメント)がサイドスリップテスト、B(ブレーキ)がブレーキ検査、S(スピードメーター)がスピードメーター検査、H(ヘッドライト)がヘッドライト検査を表しています。
検査結果を確認したら、次の排気ガス検査に向けて車を前進させます。
以下の動画は、ユーザー車検の全体の流れを紹介している内容となっています。参考にして下さい。(動画が削除されているように見えますが、再生ボタンを押すと問題なく再生されます)