自動車の所有者には、車を安全に運行出来る状態に維持しておく義務が有ります。車検を受けておけば良いというわけでは有りません。
その義務の1つとして課されているのが「24ヶ月定期点検」です。
24ヶ月定期点検とは
24ヶ月点検とは、車の使用者が24ヶ月毎(*)に行わなければならない点検の事で、道路運送車両法によって法定されている点検の事を言います。
* 新車の場合は購入から36ヶ月後に行い、以後24ヶ月毎に行います。
車検と同じタイミングで24ヶ月定期点検を行う事から、24ヶ月点検の事を車検だと勘違いしている人もいますが、車検とは別物です。必ず別途行うようにして下さい。なお、車検後に定期点検をしても何も問題有りません(車検も通ります)。
ただし、車検後に点検する場合(後整備と言います)、交付される車検証の備考欄に「点検整備記録簿記載なし」と記載されます。乗り続ける場合は問題無いのですが、車の売却時には「整備が行き届いていない」と受け取られて買取価格が下がる可能性が有ります。
24ヶ月定期点検をやらない場合の罰則は有る?
24ヶ月定期点検は法定点検ですが、やらなかったとしても罰則は有りません。
ただし、整備不良の場合には警察の取り締まりを受けて、以下のような罰則を受けます(普通車の場合)。
整備不良の違反 | 反則金 | 違反点数 |
---|---|---|
制動装置等違反 | 9,000円 | 2点 |
尾灯等違反 | 7,000円 | 1点 |
また、整備している車と比べると安全性が劣るので、事故を起こす可能性が高くなります。罰則が無かったとしても24ヶ月定期点検は行うようにしましょう。
24ヶ月定期点検整備のチェック項目と内容
24ヶ月定期点検でチェックする項目は、大きく分けると以下の通りです。
- 外廻り点検
- 下廻り点検
- 足廻り点検
- エンジンルーム点検
- 室内点検
それでは、上記のそれぞれのチェック項目・内容を見ていきましょう。もちろん、点検だけではなく、必要に応じて給油(補給)・修理・交換などの整備も行います。
走行距離が2年前の点検時の走行距離から10,000km以内であれば、点検を省略出来る項目が有ります(前回点検している場合のみ)。
なお、簡単にチェック出来る項目も有れば、チェックするのに知識・技術・設備が必要な項目も有ります。また、ジャッキアップをする必要も有り、点検には危険が伴います。そのため、基本的には整備工場等に依頼した方が良いでしょう。
外廻り点検
外廻り点検でチェックする項目は以下の通りです。
- フレーム・ボディ
緩みや損傷具合をチェックします。小さな凹みで車検に落ちる事は有りませんが、大きめの凹みなどが有れば不合格となる可能性が有ります。車検前に修理しておいた方が良いかもしれません。
下廻り点検
下廻り点検でチェックする項目は以下の通りです。
- エンジンオイル
- ステアリング・ギアボックス
- ステアリングのロッド・アーム類
- トランスミッション・トランスファー
- プロペラシャフト・ドライブシャフト
- デファレンシャル
- ブレーキホース・パイプ
- エキゾーストパイプ・マフラー
■エンジンオイル
エンジンオイルが漏れていないかをチェックします。
■ステアリング・ギアボックス
取り付け具合に緩みが無いかをチェックします。
■ステアリングのロッド・アーム類
緩みや損傷の有無をチェックします。
■トランスミッション・トランスファー
ミッションオイルの量とオイル漏れをチェックします。
■プロペラシャフト・ドライブシャフト
連結部の緩みやドライブシャフトのジョイント部分のダストブーツの亀裂や損傷をチェックします。
■デファレンシャル
デファレンシャルオイルの量・漏れをチェックします。
■ブレーキホース・パイプ
ブレーキオイルの漏れやホース・パイプの損傷具合をチェックします。
■エキゾーストパイプ・マフラー
「取り付けの緩み・損傷・腐食」や「遮熱板の取り付けの緩み・損傷・腐食」「マフラーの消音機能など」のチェックをします。
足廻り点検
足廻り点検でチェックする項目は以下の通りです。
- かじ取り車輪
- ショックアブソーバー
- サスペンション
- ブレーキのマスターシリンダ、ホイールシリンダ、ディスクキャリバー
- タイヤ、ホイール
- ディスクブレーキ
- ドラムブレーキ
■かじ取り車輪
ホイールアライメントのチェックをします。バランスが悪ければ調整します。
■ショックアブソーバー
ショックアブソーバーの損傷やオイル漏れをチェックします。
■サスペンション
損傷や取り付け・連結部の緩みをチェックします。
■ブレーキのマスターシリンダ、ホイールシリンダ、ディスクキャリバー
各部の液漏れ・損傷・摩耗・機能のチェックをします。
■タイヤ、ホイール
タイヤの空気圧・亀裂・溝の深さ・ナットの緩みなどをチェックします。また、ホイールのベアリングの「がた」もチェックします。
■ディスクブレーキ
ディスクとブレーキパッドとの間に隙間が有るか、ブレーキパッドの摩耗具合、ディスクの摩耗・損傷具合をチェックします。
■ドラムブレーキ
ドラムとライニングとの間に隙間が有るか、ライニングの摩耗具合、ドラムの摩耗・損傷具合などをチェックします。
エンジンルーム点検
エンジンルームのチェックする項目は以下の通りです。
- パワーステアリング
- 点火装置
- バッテリー、電気配線
- エンジン
- 冷却装置
- 燃料装置
- 公害発散防止装置
■パワーステアリング
ベルトの緩みや取り付けの緩み、オイルの漏れ・量をチェックします。
■点火装置
スパークプラグの状態や点火時期、ディストリビュータのキャップの状態をチェックします。
■バッテリー、電気配線
ターミナル部の緩みや腐食をチェックします。そして、電気配線の接続部の緩みや損傷具合もチェックします。
■エンジン
排気ガスの色やエアクリーナーエレメントの汚れや詰まりなどをチェックします。
■冷却装置
ファンベルトの緩みや損傷、また冷却水の漏れをチェックします。
■燃料装置
燃料漏れの有無をチェックします。
■公害発散防止装置
一酸化炭素等発散防止装置や燃料蒸発ガス排出抑止装置などなどの公害発散防止装置のチェックをします。
室内点検
室内のチェックする項目は以下の通りです。
- ハンドル
- ブレーキペダル
- パーキングブレーキ
- クラッチペダル
■ハンドル
ハンドルの操作具合や適度な遊びの有無をチェックします。
■ブレーキペダル
踏み込む時の床との隙間が有るか、ブレーキの利き具合などをチェックします。
■パーキングブレーキ
パーキングブレーキの利き具合などをチェックします。
■クラッチペダル
遊びや切れた時の床との隙間をチェックします。
点検整備記録簿の書き方・ダウンロード
点検整備記録簿の書き方は以下の通りです(画像をクリック・タップすると拡大画像が見れます)。
記録簿は運輸支局に隣接している自動車整備振興会で購入(100円未満)出来ます。また、インターネットでダウンロードして使用する事も可能です。
(出典:自動車整備振興会)
点検整備記録簿には、点検・整備した結果を記載していきます。
点検の結果、良好な状態だった項目には「良」に○をしていきます(用紙の書式によっては「✓」を入れます)。一方、良好な状態ではなく修理や交換などの対応をした項目には、対応内容を表す略字を記入します。略字の一覧は以下の通りです。
- 交換・・・「交」
- 調整・・・「調」
- 清掃・・・「清」
- 省略・・・「省」
- 分解・・・「分」
- 修理・・・「修」
- 締め付け・・・「締」
- 給油(水)・・・「給」
なお、該当する項目が車に無い場合は、「該当なし」を意味する「/」を記入して下さい。
その他、「ブレーキパッド・ライニングの厚さ」「タイヤの溝の深さ」「交換した部品と数量」を記載します。そして、点検整備した年月日や車の情報(登録番号など)を記載して完了です。