ビジネスニュースなどを見ていると、目につくようになってきた「スマートグリッド」について気になっていませんか?
何やら最新鋭の技術のようですから、わたしたちにどのような恩恵を与えてくれるのか知りたいですよね。
スマートグリッドとは「最新鋭の電気送電網」のこと
実はスマートグリッドが私たちに与えてくれる恩恵の割には、欠点の方が多いことをご存知でしょうか?
その上、完全な実用化にはまだまだ程遠く、発祥元のアメリカでも反対運動が行われている始末です。
もしこの事実について理解していなければ、「自分たちにも新たな技術がもたらされるのではないか」と過剰に期待してしまったかもしれませんね・・・。
しかし、ご安心ください。今回はスマートグリッドとは何なのかという基礎的な知識はもちろんのこと、現時点でのスマートグリッドの立ち位置についても紹介していきます。
「今後のためにスマートグリッドについて知っておきたい」という人には、必見の内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
スマートグリッドとは?押さえておくべき基礎知識
スマートグリッドとは簡単にいうと、効率よく電気を送ることです。
日本では経済産業省を中心に、勢力的に推進されているプロジェクトとなっています。
スマートグリッドの基礎的な理論は、アメリカで生まれました。
なぜアメリカで生まれたのかというと、当時のアメリカは慢性的な電気不足に悩まされていたため。
電気を作っても作っても供給が追いつかない、という状況が続いていました。
なぜ電気供給が追いつかないだろうと考えたとき、一部の地域に過剰に電気を供給していることが判明。
つまり、電気が必要でない場所に、必要以上の電気を供給していたというわけです。
そのせいで本当に電気が必要な場所に、電気が送ることができず、電気不足が発生したのです。
そこで、もっと必要な場所に必要な分だけの電気を送れるように、と作られたのがスマートグリッドです。
スマートグリッドの実現には「スマートメーター」が必須
スマートグリッドの根幹を支えるのは「スマートメーター」という装置です。
※画像出典:関西電力「スマートメーターの導入」より
電気供給先に上記のスマートメーターを設置し、「この供給先ではどれだけの電気が必要なのか」というデータを、電気会社へ送信するという仕組みをとっています。
このスマートメーターのおかげで「電気の送りすぎ」が発生することなく、効率的に各世帯に必要な分だけの送電ができるようになるわけです。
詳しくは後述しますが、スマートメーターについては現在完全に普及しているというわけではなく、徐々に各世帯に設置しているというのが今の日本の立ち位置です。
ただ、経済産業省は2030年までに、以下のようなビジョンを達成すると打ち出しています。
※出典:経済産業省「スマートグリッド・スマートコミュニティとは」より
このような状況になるのはまだまだ先ですが、このビジョンに向けて経済産業省が本格的に動いているのは間違いありません。
長所と短所は何がある?スマートグリッドの4つの特徴
スマートグリッドとは何なのかという基礎的な知識を紹介してきましたが、次はもう少し突っ込んで、具体的な特徴について紹介していきましょう。
具体的には以下のような特徴がありますよ。
- 電気代が安くなる
- 家電や自動車との連動ができる
- 導入コストが高すぎる
- ウイルス侵入のリスクがある
それではそれぞれの特徴について、簡潔に解説していきます。
スマートグリッドの特徴1.電気代が安くなる
スマートグリッドの最大のメリットと言えるのが、電気代が安くなるということです。
なぜ電気代が安くなるのかというと、発電効率が良くなり、無駄な電気を発電する必要がなくなるから。
事前にどれだけの電気を用意すればいいのかわかるため、むやみやたらに発電する必要がなくなります。
そのおかげで発電に必要なコストも下がるため、結果的に電気代が安くなるのです。
スマートグリッドの特徴2.家電や自動車との連動ができる
スマートグリッドを私たちの住宅にきちんと導入することができれば、家電や自動車とのリンクができるようになります。
スマートメーターによって、住宅内部のある各家電に対して効率的な電気配給ができるため、無駄に電気を使うことがありません。
また電気自動車とリンクさせることができれば、電気自動車側から電気をもらったりと様々な使い方ができるようになっていきます。
クルマは電気の貯蔵庫としても機能します。
例えばカーシェアリングサ-ビスでは、当面使わないクルマから施設や地域に電気が供給されます。
クルマがエネルギーのインフラとなる「V2G」の実現です。
ただ、これらについてはまだまだコンセプトにとどまっているので、上記のような使い方ができるのはかなり先の話になるでしょう。
スマートグリッドの特徴3.導入コストが高すぎる
スマートグリッド最大のデメリットが、導入コストが高いことです。
私たちがお金を払って導入するわけではないですが、スマートグリッドのための設備を用意する電力会社に大きな負担がかかっています。
導入コストが高いが故に、スマートグリッドは日本でまだまだ普及していません。
当社は、平成28年3月から、当社管内のすべてのお客さま(注)を対象に、スマートメーターの設置を開始しており、平成35年度末までに完了するよう取り組んでまいります。
(注)通信事業者の通信網が整備されていない一部の地域を除く※出典:九州電力「スマートメーターに関するお知らせ」より
当社は、2020年度までにサービスエリア全てのお客さまに約2,700万台のスマートメーターを設置し、30分ごとの電力使用量(積算値)を30分ごとに送信・処理を行うという世界的に見てもチャレンジングなプロジェクトに取り組んでいます。プロジェクトはメーターの開発から通信システムや運用管理システムの構築とその安定運用まで含め大規模かつ多岐にわたります。現在は開発フェーズから運用フェーズに移行し、メーターの全数設置、スマートメーターシステムの安定運用等に取り組んでいます。
※出典:東京電力「スマートメータープロジェクト」より
コストを考慮してか一気に設置はできておらず、現時点では上記のように各電力会社が徐々に設置しているという状況になっています。
まだまだすべての世帯に設置されているはいないので、完全に普及するまでにはもう少し時間がかかりそうです。
スマートグリッドの特徴4.ウィルス侵入のリスクがある
潜在的なデメリットとして考えられるのが、スマートグリッドを導入することによってウィルスが蔓延してしまうことです。
スマートメーターはIT(情報技術)を詰め込んだ機器で、内部にはさまざまな通信機能や計測機能が組み込まれている。普段はわれわれの目に触れることもなく、電力会社のネットワークにつながって情報を送ったり受け取ったりする(図1)。情報の漏えいを防ぐためのセキュリティ対策をとっても、外部からサイバー攻撃を受けるリスクをゼロにすることはできない。
スマートグリッドのために必要なスマートメーターは、データ送信をする機器です。
つまりはパソコンのような仕組みのため、悪意のある人がスマートメーターにウィルスを送り込むことも可能になります。
ウィルスによってスマートメーターのデータが改ざんされてしまうと、電気が余剰に供給される等の大きな被害を出すことになるでしょう。
上記のようにリスクをゼロにすることはできませんから、ウィルス問題はこれからも大きな問題として残っていくことになります。
【総評】スマートグリッドの本格導入はまだ先なので動向を見守るべし
ここまで「スマートグリッドとは何なのか」という知識を紹介してきました。
はっきり言って、スマートグリッドの本格的な導入はまだまだ先になることでしょう。
先述したように、スマートグリッドの根幹をなすスマートメーターの導入が完全に終わるまでも時間がありますから、具体的な恩恵を得られるのはまだ先の話です。
2万ユーザーが撤去要望
そんな中、スマートメーターの設置を拒むユーザーが続出し、問題になっている。例えばメリーランド州の電力会社PEPCOは、これまでに約57万台のスマートメーターを設置したが、1000件以上のスマートメーター撤去の要望が来ているという。
同州のBaltimore Gas&Electricも、120万の電力契約口のうち、2万件が同じようにスマートメーター撤去を希望した。
上記のようにスマートグリッド発祥元のアメリカは、理解を得られるまえに無理矢理に設置して拒否運動も起こっています。
コストの問題もありますが、わたしたちの理解を得られることも含めて、日本でのメーター設置完了まではまだまだ時間はかかるでしょう。
ただスマートグリッドが計画通りに本格的に導入されれば、わたしたちにとってはメリットが生まれることは間違いません。
今は「スマートグリッドがしっかりと導入されていくのか」という動向を見守る姿勢が重要になってきます。
まとめ
今回は「スマートグリッドとは何なのか」という部分を深掘りしてきました。
スマートグリッドとは最新鋭の技術であるものの、まだまだ本格導入までは程遠いということをわかっていただけたことでしょう。
「将来のためにもスマートグリッドについて知っておきたい」という人は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
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