LPG車とは、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas)を燃料とする自動車の事を指します。ガソリンを予備燃料として使用するLPG車も一部存在しています。
今回はLPG車のメリットとデメリットについて見ていきたいと思います。
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LPG車のメリット
LPG車の主なメリットは以下の2つです。
- 優れた環境性能
- 燃料単価の安さ
優れた環境性能
LPG車の最大のメリットは環境性能に優れている点です。日本LPガス協会によると、環境に優しいとされているクリーンディーゼル車よりも排出ガスに含まれるPM(粒子状物質)やNOx(窒素酸化物)などの量は少ない値となっています。
クリーンディーゼル車とは?燃費や環境に対する影響はどうなの?
燃料単価の安さ(但し燃費はイマイチ)
LPGの単価は、ガソリンの単価よりもかなり安いです。各燃料の単価を比較してみると、以下のようになります。
LPGの単価は2024年10月時点の価格です。なお、表示している価格はあくまで全国平均の価格ですので、販売店舗によって異なります。
燃料の種類 | 単価(円/L) |
---|---|
LPG | 79.4 |
レギュラーガソリン | 111 |
ハイオク | 122.1 |
軽油 | 91.1 |
(参考:石油情報センター、e燃費)
LPGの単価はレギュラーガソリンよりも30円ほど安く設定されています。そのため、同じ燃費のLPG車とガソリンエンジン車で燃料代を比較すれば、LPG車の方が毎月の燃料代を抑える事が出来ます。
しかし、LPG車の燃費自体はあまり良く有りません。例えば、クラウンの燃費は9.8km/Lです。現在、30km/Lを超えるガソリンエンジン車は数多く販売されており、これらの低燃費車と燃料代を比較すると、LPG車は分が悪くなってしまいます。
以下の表は、年間走行距離1万kmにおける燃料代を表した物です(燃料単価は上記の価格を利用)。
種類 | 年間燃料代 |
---|---|
LPG車 (10km/L) | 約79,400円 |
ガソリンエンジン車 (30km/L) | 約37,000円 |
ガソリンエンジン車 (20km/L) | 約55,500円 |
ガソリンエンジン車 (10km/L) | 約111,000円 |
燃費が30km/Lのガソリンエンジン車と比較してみると、LPG車の燃料代はおよそ2倍にもなってしまいます。
確かに、燃料単価はガソリンよりLPGの方が安いです。しかし、燃費性能で優っているガソリンエンジン車を購入した方が燃料代を抑える事が出来るでしょう。
LPG車のデメリット
LPG車のデメリットは以下の通りです。
- 補助金の対象が事業者のみ
- メーカーのLPG仕様車以外は改造が必要
- トヨタがタクシーの生産を終了予定
- LPGスタンドの数が少ない 等
補助金の対象が事業者のみ(個人ドライバーは対象外)
日本LPガス団体協議会は、LPG車を導入しようとする人に最大で25万円の補助金を交付する事業を行っています。しかし、この補助金の対象は事業者のみで、個人は対象では有りません。
申請者は、石油ガス自動車を導入しようとする事業者であって所有者及び使用者とする。
(引用:平成28年度石油製品利用促進対策事業費補助金‐事業細則第4条)
個人でLPG車を購入する場合は、全て実費となりそうです。
メーカーのLPG仕様車以外は改造が必要
自動車メーカーは一部の乗用車や商業用のトラックやバンなどをLPG仕様車として生産・販売しています。また、LPG仕様車以外の車種もLPG仕様車にする事は可能です。しかし、その場合には、改造業者に依頼してLPG仕様へと改造する必要が有ります。
改造費用は車種によって異なりますが、おおよそ50万円前後かかるようです。事業者がLPG車の改造を依頼する場合はさきほど紹介した補助金の対象となりますが、個人の場合は補助金の対象では有りません。
高額の費用を払ってまでLPG車にする必要が有るのか、この点は冷静に考えた方が良いでしょう。
LPGスタンドの数が少ない
LPガス自動車普及促進協議会によると、LPGスタンドの数は約1,600箇所しかないようです(いつの時点の情報なのかは分かりません)。約3万箇所も有るガソリンスタンドと比較すると、スタンド数の少なさがより際立ちますね(参考:【全国版】ガソリンスタンドの数の推移)。
このLPGスタンドの数の少なさはデメリットと言えるでしょう。
トヨタがLPGタクシーの生産を終了
現在、LPGタクシーのシェアはトヨタが約9割を占めています。そのトヨタが2017年末までにLPGタクシーの生産を終了する事を発表しました。
その後は純粋なLPGタクシーではなく、LPGハイブリッド車に切り替える模様です。LPGハイブリッド車とは、LPGとガソリンの2種類の燃料を使用するエンジンを搭載した自動車の事を言います。
この事自体はデメリットでは有りませんが、LPGスタンドの減少に影響を与えるかもしれません。
【参考】LPG車の登録台数の推移
日本国内では、約23万台のLPG車が登録されています。以下のグラフはLPG車の登録台数の推移を表した物です。
各年度の3月末時点の登録台数を集計しています。なお、平成27年度の数値は平成28年1月時点の数値です。
(参考:東京都LPガススタンド協会)
登録台数全体の約8割をタクシーが占めている状態です。
LPG車全体の登録台数の推移は「右肩下がり」です。今回紹介したように、高性能のガソリンエンジン車の存在やLPGスタンドの数の少なさなどを考慮すると、今後もLPG車は減少していくと予想されます。
特別な理由がない限り、個人ドライバーはLPG車にする必要はないでしょう。