運転経歴証明書とは、運転免許を自主返納した人が申請によって取得する事が出来る書面(カード)です。ゼロ免許証とも言われます。自主返納前5年間の運転経歴などが記載されています。
身分証明書として使用出来る事が最大の特徴で、今まで運転免許証を身分証明書として使用してきた人にとっては、その代わりになる書面です。
今回はこの運転経歴証明書について見ていきたいと思います。
なお、似たような証明書として「運転免許経歴証明書(免許の取得年月日等が分かる)」や「運転記録証明書(過去の交通違反などが書かれている)」が有りますが、これらの証明書とは異なるので注意して下さい。
運転経歴証明書の内容
運転経歴証明書は、運転免許証と同じ大きさのカードタイプとなっています。サンプルとして画像を貼っておきますね。
(出典:産経ニュース)
記載されている内容は主に以下のような事です。
- 自主返納前5年間の運転経歴
- 氏名・住所・生年月日
- 番号(返納した運転免許証と同一) 等
氏名・住所等、記載事項に変更が生じた場合は変更手続きが必要です。
また、証明書には「自動車等の運転はできません」と記載され、当然自動車等を運転する事は出来ません。車などを再度運転する場合には運転免許を取得する必要が有りますが、その場合は運転経歴証明書は返納しなければなりません。
申請方法や必要書類
運転経歴証明書を取得するためには、運転免許を自主返納してから5年以内に申請する必要が有ります。
ただし、以下の要件に該当している場合には申請する事が出来ません。
- 運転免許の取消基準に該当している場合
- 免許停止の基準に該当している場合
- 更新せずに失効させてしまった場合 等
運転経歴証明書を取得するには、自主返納が大前提となります。
申請場所は免許更新センターや各警察署です。申請に必要な書類は以下の通りです。
- 住民票の写しや健康保険証などの本人確認書類(自主返納と同時に申請する場合は運転免許証を提出するので不要)
- 写真(縦3cm横2.4cmの6か月以内に撮った無背景の物)
必要書類に関しては、都道府県や申請場所によって異なる場合が有るので事前に確認して下さいね。
手数料
手数料は1,000円です(都道府県によって異なる場合が有ります)。
発行までの期間
運転経歴証明書が発行されるまでの期間は、申請場所によっておおよそ以下の通りです。
- 運転免許更新センター・運転免許試験場・・・即日交付
- 警察署・・・後日交付(3週間~4週間)
運転免許更新センターや運転免許試験場でも後日交付となる場合も有ります。
なお、運転経歴証明書に有効期限は有りません。永久に有効です。
運転経歴証明書を取得した高齢者に対する特典
各都道府県では、運転経歴証明書を所持している高齢者の人を対象に様々な特典が用意されています。年齢は65歳以上と設定している都道府県が多いですね。対象店舗で運転経歴証明書を提示する事によって特典を受ける事が出来ます。
■運転経歴証明書の提示によって受けられる特典
- バス・タクシーなどの運賃割引
- 宿泊・温泉施設の入浴料の割引
- 買い物や食事の割引 等
大きなお店だけでなく、普段利用する商店街の店舗なども協賛店となっている事が有るので、色んな場面で特典を享受する事が出来ます。
気になる人は、お住まいの警察等のHPで詳細を確認してみてください。
【参考】運転免許証の自主返納が増えている理由
運転免許証の自主返納制度は、高齢者の事故を減らす事を目的として平成10年から導入されました。その数年後、運転免許証を返納すると身分証明書が無くなる人の事も考慮して、運転経歴証明書の発行も始まりました。
しかし、免許証の自主返納はあまり増加しませんでした。その背景には様々な理由が有りますが、1つの要因として「運転経歴証明書の制度が今一つ充実していなかった事」が挙げられます。
前述してきた運転経歴証明書の内容は平成24年改正後のものです。改正前と改正後の主な内容を比較すると、以下のようになります。
項目 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
有効期限 | 6か月 | 永久 |
申請期限 | 自主返納から1カ月以内 | 自主返納から5年以内 |
記載事項の変更 | 不可 | 可能(義務) |
再交付 | 不可 | 可能 |
言うまでも有りませんが、改正前の内容では誰も身分証として運転経歴証明書を所持しようと思いませんよね。そのため、欠点を改善するべく制度の改正が行われました。また、自主返納を促進し、運転経歴証明書を普及させるために、各都道府県で特典なども用意されています。
その結果、自主返納と運転経歴証明書の交付数は飛躍的に増加しました。これらの推移を表したのが以下のグラフです。
(参考:警察庁-運転免許統計平成27年版)
制度改正が行われた平成24年を境に、自主返納・運転経歴証明書のいずれも増加している事が分かります。制度改正が功を奏したと言えますね。