高速道路や県道などを走っていて、「登坂車線」と書かれている標識を見かけた事は無いですか?
この登坂車線って、一体何なのでしょう。速度規制や駐車規制が有るのでしょうか?以下で詳しく見ていきましょう。
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登坂車線とは?
登坂車線は、まず読み方で悩む方が多いと思いますが「とはんしゃせん」と読みます。
参考:「とうはんしゃせん」とも読みます。
(画像参照元:Wikipedia)
急勾配の道路で、スピードが極端に落ちてしまう車(例:重量の大きな車・トラックなど)を他の車と分けて走行出来る様にした車線の事を言います。
重量の大きな貨物車などは、平坦な道であれば周りの車と同じ様な速度で走る事が出来ますが、登り坂になると一気に速度が落ちてしまい、他の車と同じ道を走っていると渋滞を招いてしまいます。
そこで、渋滞緩和の為に登坂車線が設置されているのです。
参考:「遅い車は登坂車線」等の様に、遅い車に積極的に利用させる為の標識もセットで設置される事が多いです。
なお、道路構造令第21条が設置の根拠となっていますが、あくまでも「必要に応じて」設置するものなので、同じ様な傾斜の坂道だからといって必ず設置されている訳では有りません。
(登坂車線)
第二十一条 普通道路の縦断勾配が五パーセント(高速自動車国道及び高速自動車国道以外の普通道路で設計速度が一時間につき百キロメートル以上であるものにあつては、三パーセント)を超える車道には、必要に応じ、登坂車線を設けるものとする。
2 登坂車線の幅員は、三メートルとするものとする。
登坂車線と同様に、渋滞回避の為に設けられた車線として、ゆずり車線(ゾーン)と呼ばれるものがありますが、これは道路構造令などで定められている訳ではなく、登り坂以外で便宜上設置されているものです。
登坂車線は誰でも使える?
登坂車線は、主に坂道で極端にスピードが遅くなってしまう車を対象としています。確かに、大きな車両以外が走っているところを見かける事はそれほど多くはないですよね。
しかし、具体的な決まりが有る訳では無いので、普通車でも通って構いません。
馬力の弱い普通車や軽自動車は、思い切りアクセルを踏まないと登り坂である程度の速度が出せない事も有ります。思い切りアクセルを踏むとエンジンに負担がかかるので、そういった場合は気にせず利用しましょう。
最低・最高速度は?
高速道路など、走行する車の速度が速い場合、速度が遅過ぎると逆に危険です。そこで、道路によっては以下の標識によって最低速度が設けられている場合があります。
(画像参照元:Wikipedia)
しかし、登坂車線は他の車と比べて著しく速度が劣る為に、渋滞を緩和を目的に特別に設けられた車線です。この様な目的が有るので、登坂車線については最低速度は設けられていません。
一方で、最高速度については規定が有ります。
登坂車線は法律上は「本線車道」ではなく「付加車線」として位置づけられています。そして、本線車道を走る自動車の最高速度は時速100キロ(道路交通法施行令第27条)です。しかし、登坂車線は本線車道ではないので、一般道路の最高速度(時速60キロ)が適用されます(道路交通法施行令第11条)。
従って、登坂車線の最高速度は時速60キロとなります。
別途、法定速度が定められている道路については、その速度に従う必要が有ります。どこでも60キロまで出していいという訳では無いので注意が必要です。
登坂車線で追い越しはOK?
登坂車線は、高速道路に設置されている追い越し車線とは設置の目的が異なり、追い越す為のものではなく道を譲る為のものです。
また、登坂車線は左車線に設置されていますが、道路交通法第28条で「追い越す車は右側を通行しなければならない」と決められています。
(追越しの方法)
第二十八条 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
従って、登坂車線を使っての左側からの追い越しはしてはいけません。違反した場合は、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金となるので注意が必要です。
現実的にも、高速道路での追い越しは不可能ですけどね。なぜなら、登坂車線の最高速度が上述の通り時速60キロなので、登坂車線を使って追い越そうとすると速度違反となるからです。
なお、追越しは禁止されていますが、追い抜きは禁止されていないので、元々登坂車線を走っている車が走行車線を車を追い抜く事自体に問題は有りません。
駐車・停車をしてもいい?違反?
高速道路の登坂車線で見かける事はなかなかないですが、一般道に有る登坂車線ではたまに大型のトラックが駐車しているのを見かけませんか?登坂車線では駐停車をしてもいいのでしょうか?
この点については、登坂車線だから特別に認められるという規定は無く、理由もなく駐車する事は交通違反となります。登坂車線は普通車が走る事はそれほど多く無いので、停めても迷惑にならないだろう、という勝手な解釈からかもしれませんね。
登坂駐車が認められているのは、一般道でも同様ですが、「車両の故障」「急な体調不良」といった緊急事態により走行が困難な場合です。そして、この場合は三角表示板や停止表示灯によって後続車両に知らせる事が必要です。
登坂車線以外の車線
高速道路や自動車専用道路には、ここで紹介した登坂車線以外にも、以下の様に様々な名称の車線が有ります。
- 加速車線 ※1
- 減速車線 ※1
- 登坂車線
- 路側帯
- 路肩
- ランプウェイ ※2
- 補助車線
※1:高速道路の出入り口にある、本線車道から離脱若しくは合流するために設けられた道路。
※2:高低差の有る道路を連結する車道。立体的に道路が交差する事が多い。
但し、道路交通法で定められている「本線車道」は走行車線と追越車線だけです。従って、これらの車線に最高速度・最低速度の規制は適用されません。