車を購入する際、書類にサインする段階で疑問に思った事は無いでしょうか?
「注文書にサインはしたけど、契約書は交わしていない気がする・・・。」
こう思った方、鋭いですね!
自動車業界では、一般的に契約書という名の書類は有りません。これは一体どういう事なのでしょうか?以下で見ていきましょう。
契約書とは?そもそもなんで契約書ってあるの?
民法上、「契約」は買い主が購入の「申込」をして、売り主がそれを「承諾」すれば成立する(諾成契約)ので、契約書の作成は契約が成立する為に必要な訳では有りません。
では、「なぜ契約書を作るのか?」というと、契約が口約束によってされたものだと、後々言った言わないで揉める事になる可能性が有るので、契約で合意した内容を明確にし、後々のトラブルを防ぐ為に作るのです。
従って、契約書自体に法律的な効果が有るのではなく、あくまでも両者が合意した事によって法律的な効果が生まれる事になります。
注文書とは?
では、注文書とは何でしょうか?この点、注文書は「契約の申込の為の書類」を意味しています。
上述した様に、契約が成立するには買い主が申込し、売り主が承諾する事が必要です。そこで、買い主が売り主に対して注文書により契約の申込をして、それに対して売り主が承諾をすれば契約が成立となるのです。
契約の成立の為には、注文書が絶対に必要という訳ではないですが、書面にしないと注文内容が明確にならないので作成されます。
参考:一般的には、注文書が提出されると受け取った側は注文者に対して「注文請書」を発行します。この注文請書が申込に対する「承諾」を意味しています。
自動車業界では注文書が契約書代わり
自動車を購入する際に、一通りの交渉が終わると担当者が最終の見積書を発行してくれます。そこに記載されている金額に納得したら、いよいよ契約を交わす訳ですが、ここでサインする書類は「注文書」です。
注文書の雛形については、以下の様に日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連)がモデルとなる注文書を公開しています。実際にディーラーが発行する注文書も似たものとなるので、参考にして下さい。
画像を見ると、書面のタイトルは「自動車注文書」となっていますね。あくまでもこの時点では双方合意の契約という訳ではなく、客からの契約の申込という体裁をとっている訳です。
上述の様に、諾成契約が前提なので、本来は注文書が無くても双方が合意した時点で契約が成立します。しかし、自動車の売買に関しては、登録制度が有るため、実際に所有権が移転するタイミングと登録上の所有権の移転にはタイムラグが生じます。
そこで、契約書上は、裏面にある細かい取り決めを記載する「特約事項(契約成立の時期)」で、以下の様に契約成立の時期に制約を設けているのです。
この申込による契約の成立は、注文者が購入する自動車について注文者の指定する者に使用名義人の登録がなされた日もしくは注文者の依頼によって車両の修理、改造、架装等をする場合には、販売車がこれに着手した日、または車両の引渡しがされた日のいずれか早い日をもって契約成立の日とします。
つまり、注文書にサインをした時点ではまだ注文書ですが、「ディーラーが作業に着手等をした時点で注文書は契約書へと変わる」という事です。
そして、注文書が契約書へ変わるのは具体的には、「登録をした日」「修理や架装等に着手した日」「引き渡しをした日」のいずれか早い日となります。
従って、自動車の売買では、注文書にサインをした時点では厳密には注文書のままだけど、契約書も兼ねているという事ですね。
まとめ
いかがでしたか?自動車業界では契約書という名前の書類は使用されず、見積書と注文書で契約手続が行われます。
「自分がサインしたのは注文書であって契約書ではないから、後でクーリングオフやキャンセルが出来るだろう」と思っていては痛い目に遭う可能性が有ります。
「注文書にサインする事=契約書にサインする事」だと思って、慎重に契約手続を進めて行きましょうね。