日本の自動車メーカーは、海外での販売に力を入れるため、生産拠点を海外へ移転し「グローバル化」を進めています。このグローバル化は「本当の意味でのグローバル化」では有りません。
というのも、自動車メーカーは日本にある生産性の高い工場をコピーして海外に移転させるだけではなく、雇用体制(内部昇進・給与制度等)も日本国内の物を採用しています。
世界から注目された「トヨタ生産方式」のように日本の生産方式は優れており、海外に移転しても成功しています。しかし、転職率の高い海外では日本の雇用体制は向いておらず、現地に合わせた制度を作り上げていく必要が有ります。
こういった経営面でのグローバル化がまだまだ進んでいない現状では、様々な問題が発生してしまいます。
生産台数と販売台数の比率(国内と海外)
まず、日本国内と海外での生産台数と販売台数を比べて、グローバル化の重要性を数値面で見てみましょう。
出典:トヨタ投資家情報
上記はトヨタの2014年度の世界(地域別)での「生産台数」と「販売台数」を表わしたグラフです。
海外での販売台数は全体の「約75%」を占めているのに対して、海外での生産台数は「約50%」に留まってしまっています。この比率は2010年度からほとんど変化していません。
海外の自動車需要を取り込む為に、今よりもっとグローバル化を進めていく必要が有る事がわかります。
とは言え、2015年3月期の決算では、トヨタを初めとした自動車メーカーは増収増益を達成していますけどね。
経営上の問題点
次に、自動車メーカーが今抱えている経営上の問題点を見ていきましょう。
海外子会社の本社への依存
日本の自動車メーカーは、海外の生産拠点に本社から大量に人材を派遣して経営管理を行います。「本社の人間」は「本社の意向」を受けて経営管理を行うので、どうしても本社に依存しがちになってしまいます。
こういった経営管理では、何を決定するにしても一旦本社の意見を求める事になり、迅速な意思決定が出来ません。特に、品質問題は対応の遅れが大きなダメージになる恐れが有ります。
また、現地採用者は昇進をしたとしても意思決定への参加機会が少ないため、やりがいを感じられずに他社へ移っていきます。現地生産をする上で、「現地の人間の意見」を汲み上げる事が「現地のニーズ」に応える重要な情報となる事は言うまでもなく、本社への依存は「雇用問題」ひいては「商品開発」に悪影響を及ぼしてしまいます。
トヨタ「プリウス」は2009年に北米で大規模なリコール問題に直面しました。この時、統制をしたのは「現地子会社」ではなく「日本本社」です。
アメリカで発生した問題を日本国内で対処すれば、当然対応に遅れが生じてしまいました。
そこで、トヨタは今後対応に遅れが生じないように、海外子会社に品質管理等に対する権限を委譲したのです。
【参考】中国進出の問題点
中国で現地生産を行うには、中国の自動車メーカーと合弁会社を設立しなければなりません。なぜなら、中国政府が現地生産を行う場合には、出資比率が「50:50」となる合弁会社を設立するように、規制を敷いているからです。
中国では今までのような「本社依存の生産拠点の進出」は出来ない事になります。また、「現地の会社」や「中国政府」との円滑な対話も必要になります。
中国進出は、その他の国への進出に比べると難易度が高い事が分かりますね。
逆にいうと、中国進出がうまくいった暁には、他の国ではもっとスムーズに展開する事が出来るとも言えます。中国の高い壁を乗り越えた時に、日本の自動車メーカーはグローバル企業として次のステップに進めるようになるのではないでしょうか。
コメント一覧
この記事へのコメントはありません。